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異例の大規模避難 課題山積

1100人以上の住民が避難した音更緑南中(8月31日、丹羽恭太撮影)

職員配置、情報提供、健康…
長期化対応に「ルール必要」の声

 台風10号による大雨災害では、十勝管内で最大13市町村の住民7000人超が近くの学校などに避難した。帯広市の避難所開設は35年ぶりで、「災害が少ない」とされた十勝では異例の大規模避難に。多くの自治体では1日以降、避難所は解消されたが、職員配置や避難者への情報提供などが運営面の課題として浮かんでいる。一方、被害の大きい新得や清水などでは依然住民避難が続き、町は長期化に向けた避難所の環境整備に取り組んでいる。

帯広東小に500人 誘導に手間取る
 十勝では雨脚が強まった8月30日夜から翌31日にかけて、13市町村で計67カ所の避難所が開設され、約5万世帯、10万人を対象に避難指示や勧告が出た。同日正午までの避難者数は、最大7322人に上った。

 ただ翌1日には多くの避難所が解消され、自治体からは「1日のみの開設だったので大きなトラブルはなかった」(芽室)という声が聞かれる。ただ経験の少ない大規模避難だけに、運営面の課題も浮上した。

帯広では35年ぶりに避難所を開設。深夜に住民避難が始まった(8月30日夜、北栄小)

 約5万4000人に避難勧告を出した帯広市の避難所開設は、1981年の「56水害」以来。数十人規模だった所が多い一方で、「川が近く危機意識が高い地区では避難者が多かった」(総務課)。十勝川に近い東小学校には500人超が避難し、少人数の職員で食料の配布や駐車場誘導などに手間取り、「(職員の)対応が混乱した」(同)という。

 避難者への情報提供に戸惑った自治体もあり、士幌町の担当者は「避難所の人は(町の)被害状況を知りたがるが、常時張り付いている職員は被害の全貌を把握している訳ではなく対応に困った」とする。

 川の水位を確かめようと避難所を離れる住民もおり、「河川の水位上昇を避難者に伝える仕組みが必要」との指摘も。幕別町内の避難所では、札内橋や札内清柳大橋が通行止めになったなどの誤った情報が住民間で流れた。またペットを連れた住民は、各地で車中避難を余儀なくされた。

 行政側は短期間でも住民の安全に配慮し、幕別町では保健師が避難所を巡回し健康相談に応じた。住民の自主的な行動も目立ち、士幌では有志がみそ汁を作って提供、音更町では中学生が高齢者や子どもにペットボトル飲料水を配布するのを手伝った。音更町の寺山憲二町長は「住民の防災意識が高く、共助も培われている」と受け止める。

締め出されたペット連れ
 一部自治体では避難が続き、間もなく1週間を迎える。新得町では避難の長期化に配慮し、避難所になっている新得小学校にマットとして使える畳50枚を運び込んだ。

 台風7号、11号で避難が続いた足寄町の担当者も、長期化に備えた対策の必要性を指摘する。同町は給食センターによる炊き出しを行い、健康相談ブースを設けて避難者のケアに努めた。町の越後和希子保健師は「避難者の健康状態の把握は難しく、受付時に確認できるよう表を作り直すなど改善策が必要」とする。

 ペット連れで避難所に入ることができず、駐車場で車中泊をする人もいた。苦情や大きなトラブルはなかったが、車中泊にはエコノミークラス症候群の危険性がある。同町総務課の石川建祐職員担当主査は「ペット連れの避難者が増えることも考えてルール作りを進めなくては」と話す。

 足寄では避難所の運営のほか、土のう積みや河川の監視などもあり、24時間通して対応に当たる職員も現れた。大野雅司総務課長は「長期化の場合、職員の健康管理も考えてシフトを組む必要がある」と話している。


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