高繁殖能力初産母豚における授乳期飼料の栄養水準
道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ
1.試験のねらい
初産母豚は授乳期において経産母豚より飼料摂取量が少なく泌乳量に見合う栄養摂取が出来ない。授乳母豚のタンパク質摂取量は母豚体重減少や離乳後の繁殖性に影響すると考えられる。豚用飼料におけるタンパク質含量は豚のリジン要求量を基に設計されることから、授乳期における初産および2産母豚のリジン要求量を推定し、これに基づいた適正な飼料中リジン含量およびTDN 含量を提示する。
2.試験の方法
1 )授乳期における初産および2産母豚に異なるリジン含量の飼料を給与し、リジン摂取量と血清中の尿素態窒素濃度の関係からリジン要求量を推定する。
2 )授乳期の初産母豚に対して推定されたリジン要求量を基にCP とTDN 含量を高めた飼料を給与し(低TDN 低CP 区:LL 区、低TDN 高CP 区:LH 区、高TDN 低CP 区:HL 区、高TDN 高CP 区:HH 区)、体重および背脂肪厚変化、哺育および繁殖成績に及ぼす効果を明らかにする。
3 )道内養豚場において大豆粕添加により飼料中CP 含量を高めた飼料給与を行い、離乳後繁殖性および次産総産子数に及ぼす効果を明らかにする。
3.成果の概要
1 )リジン要求量は初産母豚が一腹子豚の日増体重(LSDG)2.8kg/日程度で76g/日、2 産母豚がLSDG3.0kg/日程度で74g/日と推定された(図1)。現状一般的な授乳期飼料のリジン含量0.9~1.0%は、哺乳頭数が多い初産母豚ではリジン摂取量が不足すると考えられたが、2産母豚ではリジン要求量を充たせると判断した。
2 )授乳期における初産母豚にリジン含量を1.15%程度に高めた飼料を給与することでCP 摂取量とリジン摂取量が増加し(p <0.05)、母豚体重減少が軽減する傾向(p =0.12)にあった(表1)。飼料中TDN 含量を5ポイント高めることはTDN 摂取量改善に寄与しなかった。LH 区はリジン摂取量が73g/日とリジン充足率(新指標)をほぼ充たし、受胎率、次産総産子数および非生産日数が最良であった。授乳期の初産母豚に給与する飼料は飼料中リジン含量を1.15%程度とすることが望ましい。
3 )試験期間は対照期間に比べて、発情再帰日数が6.2日短縮し(p <0.05)、PMS 製剤投与率が26ポイント減少した(p <0.05)(表2)。飼料中リジン含量を高めることは離乳後の繁殖性改善に有効であることが確認された。
4 )以上から、哺乳頭数の多い初産母豚に給与する授乳期飼料はリジン含量が1.15%、TDN 含量が75%を推奨する。2産母豚は現状一般的なリジン含量0.9~1.0%で良い。
4.留意点
1)本成果は哺乳頭数および泌乳量が多い初産母豚を飼養している養豚場で活用する。
2)飼料中CP 含量は、飼料中リジン含量を基準とした理想アミノ酸比を満たすように設計すること。
3)本成果はSPF 環境下における試験結果によって得られた。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 家畜研究部 中小家畜グループ 岩上弦太郎
電話(0156)64-0608 FAX(0156)64-6151
E-mail:iwagami-gentarou@hro.or.jp