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大豆のリン酸施肥を3割減らせる前作条件

十勝農試 研究部 生産環境グループ
中央農試 生産研究部 水田農業グループ
北海道農業研究センター 生産環境研究領域

1.背景と目的
アーバスキュラー菌根菌(AM 菌)は植物根に共生する糸状菌であり、植物のリン吸収を促進する。大豆ではAM菌感染による増収やリン酸減肥の可能性が示されているが(平成22年指導参考)、圃場での感染実態とその効果にはなお未解明な点がある。このため、多様な土壌・栽培条件下におけるAM菌感染と大豆のリン酸施肥反応を検討し、リン酸減肥可能量およびその条件を明らかにする。

2.試験方法
1) AM菌の感染実態と感染率に及ぼす要因
大豆作付圃場のAM菌感染実態および感染率に係る要因を整理する。
調査項目:開花期AM菌感染率、土壌理化学性、耕種概要 
2) 大豆栽培におけるリン酸減肥技術
大豆作付圃場のAM菌の感染状況と土壌条件、リン酸施肥反応の関連性を検討し、リン酸減肥可能量を設定する。
リン酸施用量:標準区(20~13kg/10a)、30%減肥区、50%減肥区、無リン酸区。
前作:宿主作物(AM菌が感染できる作物:とうもろこし、麦類、豆類、ばれいしょ等)
非宿主作物(AM菌が感染できない作物:てんさい、そば、アブラナ科等)、
調査項目:開花期茎葉重、開花期AM菌感染率、子実収量、リン酸吸収量、土壌理化学性

3.成果の概要
1) AM 菌の感染率の平均は、宿主作物跡で34%、非宿主作物跡で22%であり、火山性土で高く、トルオーグリン酸含量が少ないほど、リン酸施肥量が少ないほど、開花期の土壌硬度が小さいほど高い傾向にある(表1)。
2) 開花期茎葉重および子実収量(標準区で238~412kg/10a)は、リン酸施用量が概ね30%減肥までは前作にかかわらず標準区と同等である(図1)。なお、十勝では、標準区で徒長による倒伏が著しかったため、リン酸減肥区の方が多収な例がある。また、開花期茎葉重の変動は子実収量の変動より大きく、減肥程度が大きいほど変動幅も大きい(図1)。
3) 子実収量のばらつきの中央値は宿主作物跡ではリン酸50%減肥まで変化しない。一方、非宿主作物跡(てんさいの茎葉すき込み条件を除く)ではリン酸30%減肥で低下し(図2)、明らかに減収する結果(平成22 年指導参考事項)もあることから、非宿主作物跡のリン酸減肥は避けた方が良い。ただし、非宿主のてんさい跡でも茎葉すき込み条件では、茎葉分解による養分供給が見込まれ、標準区比99(97~101)%と、減収を示す圃場もないことから30%程度の減肥が可能である。
4) AM菌感染率が40%未満では、宿主作物跡でのリン酸50%減肥や非宿主作物跡でのリン酸30%減肥で開花期の生育量が低下する圃場が散見される。一方AM菌感染率が40%以上ではリン酸50%減肥条件であっても開花期に著しい生育低下を示す事例は認められない(図3)。また、子実収量の低下もないことから、AM菌感染率が高い圃場ではリン酸を50%減肥できる可能性がある。 
5) 「ユキホマレR」、「音更大袖」、「ユキシズカ」、「トヨハルカ」についてAM 菌感染率、リン酸減肥時の減収程度等を比較すると、明らかな品種間差は認められない。
以上のことから、大豆のリン酸施肥を、宿主作物栽培跡および茎葉をすき込んだてんさい栽培跡で現行施肥基準に対して30%減肥できる。 
 
4.成果の活用面と留意点
1) 大豆作付け圃場における前作条件に対応したリン酸施肥に活用する。
2) 初期生育確保が困難な地域や圃場、有効態リン酸が土壌診断基準値に満たない圃場、収量水準が極
端に高い(子実収量400kg/10a以上)と想定される圃場での適用は避ける。 
3)アーバスキュラー菌根菌感染率の事前診断技術の開発について北農研で今後検討する。





詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。

道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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