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青色申告決算書を使って所得解析ができる!

十勝農試 研究部 生産システムグループ

1.背景と目的
農業経営を取り巻く外部環境が変化する中、所得額の推移と所得変化の要因の把握を通して、その影響を評価し、対応策を検討することが必要になる。しかしながら、公的な統計が縮小されており、市町村単位での農家の経済状況を把握することが難しくなっている。そこで、農業関係機関が地域における農家の経済状況の把握に役立てるため、税務の一環として作成された青色申告決算書から農業所得の推移と変化の要因を整理するための解析手法を確立する。

2.試験方法
1) 畑作経営に関する収益構造の解明
畑作経営を対象に基準年に対する所得変化の程度とその要因を整理するための解析手法を確立する。用いた資料:青色申告決算書(損益計算書と収入金額の内訳)、検討項目:専従者給与を控除する前の差引金額(決算書36欄)を所得
2) 青色申告書を活用した経営管理手法の開発
青色申告決算書を用いた所得解析の手順を整理し、解析のマニュアル化を図る。検討項目:所得解析の手順、実践する上で注意すべき点。

3.成果の概要
1) 十勝中央部の畑作専業経営(13戸)を対象に、青色申告決算書(図1)を用いた農業所得の推移と基準年に対する所得変化の要因を例示した(図2及び図3)。基準年とした水田・畑作経営所得安定対策下の2008年度と比較すると、2012年度の所得は、13.9%増加していた。所得の増加には、収入が寄与しており、中でも農産収入が増加したことが影響している。農産収入の増加には、小豆、てんさいが大きく寄与しており、てんさいの収入増加には、価格と収量の双方が上昇したことが影響している。
2) 青色申告決算書を用いた所得解析の手順を以下に整理した。まず、複数年度分の青色申告決算書(損益計算書、収入金額の内訳)を準備する。次に、基準年を100とした指数を用いて、所得の推移を把握する。その後、所得の変化率に対する寄与度を用いて、収入と経費が所得変化に及ぼした影響を把握する。更に、収入や経費を構成する要素ごとに寄与度を算出し、所得変化に大きな影響を及ぼした要素を特定する。最終的に、所得の指数は、折れ線グラフに、各構成要素の寄与度は、樹形図にまとめる。
3) 青色申告決算書を用いた所得解析を実践する上で注意すべき点を以下に整理した(表1)。所得解析の対象は、農家集団であるが、個々の農家を対象にすることも可能である。営農類型は、野菜等の価格変動に伴う影響を正確に把握するため、農畜産物の収入の構成比を基に専業経営とそれ以外に区分する。これにより、同一地域内において営農類型間の比較が可能になる。用いる資料は、農業青色申告会等の指導の下で同一の手続きにより仕訳された農家群のものが望ましい。扱うデータは、農家集団における平均値を基にした解析であるため、その抽出にあたり代表性に配慮する。また、基準年の設定は、原則として任意であるが、前年度の他、政策支援の会計処理を始めた2008年度や2012年度がその候補になる。

4.成果の活用面と留意点
1) 農業関係機関が地域の農業所得の実態把握と実績評価を行う際に活用する。
2) 解析指標の算出方法を解説したマニュアルをホームページにて公開予定である。





用語 寄与度:構成要素の増減が、全体の変化率を何ポイント押し上げたか(押し下げたか)を示す指標。

詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。

道総研十勝農業試験場 生産システムグループ 
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp 

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