難失聴でもガイド楽しみたい 動物園でアプリや筆談体験会
聞こえない人や聞こえにくい人でも、施設ガイドの説明を楽しみたい-。帯広市中途難失聴者協会(佐々木亜規子会長)は、音声をリアルタイムで文字化するアプリ「UDトーク」や筆談でガイドを楽しむ体験会を14日、おびひろ動物園で初開催した。参加者は動物の習性などについて語られる説明を、タブレット端末や要約筆記の文字で読み理解を深めた。今回は関係者向けだったが、今後は広く一般向けにも企画する予定だ。(菊地青葉)
難聴者らがガイドや講演会などに参加するには、通訳者の調整が必要な場合が多く、積極的に参加することができない現状があるという。聞こえにかかわらず楽しめるようにと企画し、協会員と帯広市要約筆記サークルたんぽぽのメンバー計16人が参加。動物園の稲葉利行園長が案内した。
UDトークは、会話の音声を手元のタブレット端末などの画面に即座に文字で表示する機能を持つ。利用者は事前に自身のスマートフォンなどにアプリをダウンロードして使う。
稲葉園長は、無線通信技術で参加者の端末とつながったマイクを使って説明。利用者は手元に表示される内容にうなずきながら、文字を目で追っていた。筆談利用者は、要約筆記通訳者が書き取った内容を確認した。
稲葉園長が馬ふれあい舎の来園者向け手洗い場を案内した際には、プレオープン時に来園者タイルや馬の蹄鉄(ていてつ)などで飾り付けしたエピソードを紹介。端末の表示に見入っていた参加者の一人は、「これは説明がなければ気付かなかった」とつぶやき、ガイドの良さを実感していた。
アプリを利用した佐々木会長は「変換しづらい言葉があるものの、それを理解した上で活用できる。圧倒的に情報量が多く、精度も高い。有効だ」と評価。アプリを使ってガイドの話を文字化し、QRコードを設置して説明を見られるようにすることを提起した。
さらに「聞こえは人それぞれ。コミュニケーション支援には多くの種類があり、メリット、デメリットがある。その人に合った方法を自身で選択できることが大切」と強調。障害者差別解消法が改正され、今年4月からは事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化された。それも踏まえ、「きちんと整備してほしい」と語った。
UDトークは、全国の自治体や企業、学校などで導入されており、会見や議会中継の字幕配信などにも活用されている。帯広市でも一部講演会などで活用事例があり、同協会では導入に向けた要望を行っている。