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農に向き合う~農業経営部会会員紹介「足寄・北十勝ファーム」

北十勝ファームの上田金穂社長(村瀬恵理子撮影)

1.和牛・交雑種から日本一の短角牛牧場に
 本拠の足寄町と釧路市音別町の2カ所合わせて約300ヘクタールの広大な牧場を持ち、短角牛の繁殖から肥育を一貫で手掛ける。うま味の強い赤身肉になる短角牛は、日本全国で推計約8000頭飼育されており、うち約600頭を飼う最大の生産者だ。

 1905年に曽祖父の喜七さんが足寄町へ入植し、当初は輸送用に使う馬を買い付け、本州へ出荷していた。関東大震災や戦火を挟んで牧草販売や畑作・畜産兼業を経て、1980年から肉牛経営へと移行、ホルスタインの去勢牛、黒毛和牛、87年から交雑種の肥育を手掛けた。

 短角牛の一貫生産は、食品・野菜の会員制宅配会社から求められて2005年から始めた。当初ためらいはあったが、上田金穂社長は「腹をくくったからには日本一の牧場にしてみせる」と決意、食肉卸だけでなく、小売業や飲食店へと販路を広げてきた。

2.国産飼料、天然林からの湧水で育てる
 飼料は自家の牧草とデントコーンのほか、十勝産の小麦ふすまや傷物の大豆、ビートの搾りかすなど国産ほぼ100%。交雑種の肥育を始めたころに、飼料代の削減を図ろうと配合飼料から単味の飼料の独自配合に挑み、うま味が深い肉を作るための飼料設計ノウハウを積み上げてきた。

 牛には、牧場の裏手の雑木の天然林から湧き出る水を飲ませている。言い換えれば、牛は水道水に含まれる塩素を体内に入れない。牧場内に炭や黒鉛珪石(ブラックシリカ)を埋めてマイナスイオンを豊富にするようにしており、取引先は「肉に臭みがない」と一様に評価する。

3.優れた経営者と交流 足寄支部長も
 同友会には、インターネット通販や産業の6次化を学ぶ同友会の研修旅行に参加したのを機に2009年に加入した。上田社長は、経営に関して「雲の上の人たち」に見えたメンバーとの交流の利点は大きかったと振り返る。

 足寄地区会では13~15年に会長を務めた。地域にいるメンバーが会社や自らのことを語り、周囲により深く知ってもらう機会を設けて、互いの親近感や参加率を高めようと意識した。現在は長女の七加(ななか)さんが主に参加し、地サイダー「オンネトーブルー」の商品化などの活動に関わるようになっている。

4.小売りの支えでオーガニックビーフ
 有機農業で育てた肉牛の増産、普及を目指す「北海道オーガニックビーフ振興協議会」(HOBA)が2017年に設立された際に参画した。20年には関東甲信越8都県で営業するコープデリ生活協同組合連合会(埼玉県さいたま市)と覚書を交わし、短角牛の子牛が生まれた際に買い取ってもらい、育成・肥育の受託料を受け取りながら、順次出荷する。

 小売り側が有機の肉牛の生産者を支援し、安定した調達を目指す中で、生産者を支える枠組みを築いてくれたのは、経営安定化への支えになる。

 仏原産で脂肪の少ない赤身肉と評価が高いシャロレー種と和牛の交配にも取り組む。和牛よりも体が大きくなる特性を生かしつつ、肉のうま味や適度な霜降りを両立させる改良に挑戦する。


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