“黄金”実る おいしいマチ 小麦の生産量日本一 勝毎音更支局開設
■農
豆はブランド、ニンジンは全道トップ
農業を基幹産業とする音更町は、日本の食を支える一大産地だ。生産量日本一で知られる小麦をはじめ、豆類や野菜など各作物で大きなシェアを占めている。
町の2020年の営農実態調査によると、小麦の作付面積は全国一の約6500ヘクタール。ドイツ製の巨大なコンバインが黄金色に実った“穂の海”を突き進む景色は風物詩となっている。
作付けが最も多く、うどんなど製麺性に優れた秋まきの「きたほなみ」をはじめ、多様なニーズに応える新品種としてパン用の超強力粉「ゆめちから」が登場するなど種類、用途もさまざま。地元の学校給食にも使われている。
また、生産量日本一をPRする「麦感祭(ばっかんさい)」は、新型コロナウイルスの影響で昨年は中止したものの、地元の小麦農家やパン製造販売の満寿屋商店(帯広)などの協力でこれまでに9回を数える音更の名物行事となっている。
小麦に限らず、小豆と大豆は作付面積が2000ヘクタールを超え、全国屈指の収量を誇る。小豆は三重県伊勢市の銘菓「赤福」の菓子などに使われ、大豆はブランド名「音更大袖振大豆」として認知度も高まっている。
JAおとふけ(笠井安弘組合長)が小麦や豆などに次いで「第5の作物」として生産に注力してきたニンジンは、作付面積が約500ヘクタール、収量は約2万トンに上り、道内1位(2位は幕別)の産地となっている。
ブロッコリーも道内主産地の一つで、品質への評価は高い。中でもJA木野(清都善章組合長)は、定期貯金の利用者に木野産ブロッコリーなどを贈る「ブロッコリー定期貯金」と名付けたユニークな取り組みを展開している。
■食
子ども育てる熱い自校給食
音更町は十勝管内で唯一、小学校全12校、中学校全5校の給食を各校の調理場で作る自校給食を行っている。道内でも珍しく、作る人の顔が見えるおいしい給食は子どもたちの食育につながっている。
町の学校給食は1932年、下音更尋常高等小学校(現下音更小)でイモ団子やカボチャを出したことが始まり。
それ以来、地元産にこだわった給食を温かく、おいしい状態で食べてもらいたいという思いから、全ての学校の校舎内に給食室を完備してきた。
現在は栄養教諭4人が献立を統一して作成。約70人の調理員が各校に配置され、小規模校では1人で賄う学校もある。調理員と顔を合わせることで給食がより身近に感じられ、子どもたちに感謝の気持ちも芽生える。
月1回の「おとぷけ給食」では、季節の地場産品を味わう。児童らが校内放送で献立や食材を紹介する取り組みも行い、町内の製粉工場や農業協同組合などの地域産業を知るきっかけになっている。
調理時間になると、教室に香ばしい匂いが広がり、食欲をそそる。音更中学校3年生の清野日陽さん(15)は「給食は学校生活の中で1番の楽しみ」と笑顔を見せる。町教委は「自校給食は農業中心の町の教育を支える大きな柱であり、コストや労力がかかったとしても、続けていくことに意義がある」としている。