帯広出身の寺田さん 全国の献血ルームでの献血を故郷で達成
帯広市出身の会社員寺田悠紀さん(34)=千葉県習志野市=は9年前から日本各地の献血ルームを回って献血を続け、25日、故郷の帯広で“全国完全制覇”を達成した。この間、訪れた献血ルームは、廃止された施設を含めて159カ所。「いろいろな県の人たちの助けに少しでもなれたならうれしい」と、すがすがしい笑顔を見せた。
25日午前9時前、帯広市東7南9の帯広すずらん献血ルーム。日曜限定の営業日に合わせて来帯した寺田さんは、慣れた様子で受け付けと問診を済ませ、400ミリリットル献血を終えた。
寺田さんは帯広で生まれた後、すぐに父親の仕事で道内外を転々としたが、現在も祖母が音更町に住んでいる。献血は大学時代、空き時間にしたのが最初で、その後は年1、2回程度だった。「城カード」や「ダムカード」など各地を巡りながら収集・達成する過程が好きだったことから、全都道府県の献血ルーム訪問を思い付いた。
2011年から本格的に始め、13年の宮崎市で47都道府県を達成。次は全献血ルームを目標に掲げた。献血の間隔が短い「成分献血」を優先し、年24カ所を回ったことも。血液の状態を良くするため、献血前は脂ものは控えた生活を送る。400ミリリットルのみ行う帯広はもともと後半に考えていたが、「残り少なくなる中でゴールに意味を持たせたい」と最終地に決めた。
全国の献血ルーム数は4月現在で138カ所。常設施設の再編が進み、道内でも函館、室蘭が廃止され、旭川は1カ所に減った。帯広も過去に存廃論議があり、「達成する前に無くならないかドキドキした」と寺田さん。道赤十字血液センター帯広出張所の鈴木清晃所長は、今年は新型コロナウイルスの影響で献血バスの訪問が断られるケースもあるといい、「時間や費用をかけての献血。血液が逼迫(ひっぱく)しているのでありがたい」と感謝した。
実は注射は嫌いという寺田さん。針が刺さる瞬間も採血中も顔を背けたくなるが、「少し我慢すれば、誰かが助かるから」。各地の献血ルームで若者の姿を見ることが少なく、「週に1日でも夜間に献血できる所があればいい」と裾野拡大へ持論を語った。
献血後は達成感を漂わせながら、「どこかに新しいルームができたら、また行きたい。これで終わりではなく、献血は自宅近くで無理せずに続けたい」と話した。(安田義教)