ユーラシア乳文化 著書に 帯畜大の平田准教授
帯広畜産大学の平田昌弘准教授(49)=文化人類学=は、ユーラシア大陸の乳文化を紹介する「デーリィマンのご馳走」を出版した。自然風土や文化に根差した多様な乳製品が登場し、平田氏は「十勝や日本の酪農家が、新たな乳文化や製品開発を考えるきっかけになれば」と話している。
「デーリィマン」は酪農場主や牛乳屋を指す言葉。平田氏は25年以上に渡ってユーラシア大陸をめぐり、牧畜民の生活や乳文化を観察してきた。独創的なアイデアを多くの人に知ってもらおうと、酪農雑誌「月刊デーリィマン」に連載した記事を本にまとめた。
モンゴルでは加熱したミルクをすくい上げ、頭の高さから鍋に落とす作業を繰り返すことで、「ウルム」と呼ばれるクリームに加工している。わずかに乳酸発酵したウルムは甘酸っぱく、まろやかな味がする。
バターを加熱して加工する「バターオイル」は常温で保存でき、牧畜民の生活には欠かせない存在と紹介。インドでは全粒粉パンにつけたり、調味料として活用したりするなど、豊かな食生活を支えている。また一部の牧畜民が食べる非熟成チーズは固くておいしくはないが、たんぱく源として貴重で加工の本質を体現していると伝えている。
「酪農家が安定して生乳を生産するには消費拡大が必要となる。いかに日本食と融合させるかが課題」と平田氏は指摘し、ヒントとしてチベットの事例を挙げる。酵母熟成チーズを使った料理が食文化として定着し、だしとしてスープにも活用している。日本で乳製品と言えばチーズやヨーグルトが主流だが、「さまざまな選択肢を知ってほしい」と願っている。
発行はデーリィマン社。税別1800円。(池谷智仁)