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制作拠点音更に 帯広出身の彫刻家板東さん

音更町内に新たなアトリエを構え、ニューヨークと2つの拠点で創作活動を続ける板東さん

 帯広市出身で米国ニューヨークを拠点に活動する彫刻家板東優さん(64)が今春、古里の十勝に第2のアトリエを構えて創作活動に励む。音更町内の旧工場を取得して3月中に過去の作品などを移設、ニューヨークと音更を行き来して自らの表現活動を追求する。自身が客員教授を務める東京造形大学の学生を招いた指導も考えており、「自然と向き合うことができる」と古里での活動を楽しみにしている。

 板東さんは21歳のときにイタリア・ローマに渡り、現地の彫刻家に師事、現地の彫刻展に出品を続けた。第1回高村光太郎大賞展に入賞した他、道内外の公共施設や公園などに彫刻作品を展示している。芽室町で創作に取り組むこともあったが、30代から主にニューヨークを拠点に作品を制作してきた。

 音更町木野地区にある中島金属工業の工場が幕別町に移転し、同社から旧工場のうちの1棟のアトリエ使用を打診された。約800平方メートルの広々とした空間など、立体を扱う彫刻家にとって「最高の環境」と即決した。「大都市と地方の違いはあるが、十勝の空気の透明感はローマやニューヨークと似ている」と喜ぶ。

 「自分の内面にのめり込むと、自分に都合の良い表現、色彩を持ってしまう」と、あえて熟練や経験の概念を危険視する板東さんにとって、自然は濁りのない究極の表現対象で、自然豊かな十勝での環境の変化を楽しみにする。年数回のペースで両地域を往復する予定だが、「時差も含めたインターバルが、違う目を与えてくれる」と制作面での“刺激”にも期待する。

 25日から3月10日までは都内銀座のギャラリーで「破壊と造形」と題した個展を開催中で、1990年代に着手したが中断し、その後完成させたブロンズ彫刻を展示している。9月に神田日勝記念美術館(鹿追)で個展を、10月には都内で彫刻制作に当たって描いた絵を紹介する新たな趣向の個展も予定し、転機の1年になりそうだ。

 板東さんは「生まれ育った土地なので、作品を安心して置いておける。守りに入ることなく、思い切って制作できる場所が手に入ったという思い」と笑顔で話している。(原山知寿子)


◆板東優氏について
Masaru Bando-ホームページ

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