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衛星データと地理情報で農地の排水性を診断

道総研 中央農業試験場 農業環境部 環境保全グループ
    十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
    北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
 
1.背景と目的
 近年頻発傾向にある極端な多雨による湿害を低減するため、農地の排水性を良好に維持・改善することが重要である。そこで、農地の土壌特性を空間的に把握し、効率的に土層改良を進めるため、空知地域(水田転作畑)と、十勝・オホーツク地域(普通畑)をモデル地域とし、衛星リモートセンシング(以下、リモセン)を活用した排水不良域の推定手法を開発した。

2.試験の方法
1)衛星リモートセンシングによる土壌水分環境の推定法の開発
  表層土壌の水分量や、下層における地下水の影響程度を、リモセン情報で把握する手法を開発する。
  (1)表層土壌:衛星画像の撮影日に収集した表層土壌の体積含水率とリモセン指標との関係を解析。
  (2)下層土壌:グライ反応(酸素が少ない条件で発色)の出現深さとリモセン指標との関係を解析。
2)衛星リモートセンシングと地理情報に基づく排水不良域の推定法の開発
 リモセン情報と地理情報(土壌型・地形区分)から、排水不良域を推定する手法を開発する。
  (1)地域:土壌調査のデータセット(学習データ:過去調査を含む転換畑699、普通畑315地点)を供試し、地理情報と土壌に関わるリモセン情報から排水不良の要因解析や、排水不良域を推定。
  (2)圃場内:土壌と作物に関わるリモセン情報から圃場内で相対的に排水不良の区域を推定。
3)排水不良域推定法の検証と活用事例
上記2)の推定手法の妥当性や推定結果に基づく土層改良の効果を検証する。

3.成果の概要
1)(1)表層土壌(深さ5cm)の水分量は、土壌型に関係なく、裸地条件における短波長赤外光反射率の正規化指数(NBR2)と直線的な関係が認められた(図1)。
  (2)水田転換畑地域において、グライ反応の出現深さが異なる地点群間では、裸地条件での短波長赤外光と近赤外光の反射率の正規化指数(NDSI)は統計的に異なった(図2)。
2)(1)データ分析の結果、上記リモセン指標や既存の地理情報は、排水不良区分の推定に有効であった(データ省略)。この結果や既往知見を参考に、地域の地理的条件から排水不良区分を簡易に推定するための評点を各要因に割り振り、合計得点により排水不良域を推定する手法を開発した(表1)。
  (2)圃場内の土壌乾湿の不均一性については、相対的にNBR2が高くNDVIが低い区域は、排水不良により生育不良を呈している可能性が高いと考えられた(データ省略)。
3)(1)推定した排水不良区分の的中率は、検証用地点を含め約7~8割であった(表2)。また、地理的条件から排水不良と推定された圃場において、圃場内で相対的にNDVI(作物生育良の目安となるリモセン指標)が低い区域は、相対的に排水性が劣る事例が多いことを土壌断面調査で確認した(データ省略)。
  (2)圃場内の排水不良域において、カットブレーカー(営農排水施工機)の部分施工区では、無施工区よりも、ばれいしょや小豆の相対的な収量が高まることを確認した(データ省略)。
以上より、リモセン情報や既存の地理情報を活用する本手法は、排水不良域を特定し、効率的に対策を講じることに役立つと考えられた。

4.留意点
1)本成績は空知、十勝およびオホーツク地域を対象とした検討結果である。
2)リモセン情報はMicrosoft Planetary Computer等を使用して取得し、4月中旬~6月上旬の比較的乾燥した(3~6日程度の無降雨期間)裸地条件における複数画像の中央値を用いた。他地域で適用する際は相対的な指標として活用する。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 生産技術グループ
電話(0155)62-2431
Email:tokachi-agri@hro.or.jp

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