バンカーサイロにおける多層詰めサイレージ調製技術
道総研酪農試験場 天北支場 地域技術グループ
道総研酪農試験場 酪農研究部 乳牛グループ
道総研畜産試験場 畜産研究部 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
ヨーロッパで行われているサイレージの多層詰め技術を、道内で栽培される多回刈り牧草や飼料用とうもろこしで実施・利用した場合の労力実態および多層詰めに特有な追詰めによるサイレージ品質への影響を明らかにして、多層詰めを導入する際のポイントを整理する。
2.試験の方法
1)多層詰めを実践しているA・B農場において、サイレージ調製・利用の作業時間を調査した。
2)(1)実規模で調製した多層詰めサイレージの飼料成分・発酵品質の測定、(2)詰込み後シート被覆前に、プロピオン酸Ca(100~300g/m 2)または食塩(500g/m 2)を散布し、表面のかび発生状況の調査、(3)詰込み11・33日後に開封・追詰めを行ったサイロで発酵品質の測定を行った。
3)各層の厚さ、乾物率、飼料成分から混合物の成分値を推定し、測定値と比較した。
4)新規に多層詰めを開始したC農場で、導入法、飼料成分を調査した。
3.成果の概要
1)追詰め前の準備作業に90~130分/ 基を要し(表1)、両農場ともタイヤ除去をデメリットとして挙げた。多層詰めでは原料草の拡散に時間を要すが、単層詰めでの推奨値(20~30秒/ ㎥)と同等以上の十分な踏圧時間が確保された(表1)。取出し作業は約20分/ 日、除雪が必要な場合はさらに10分前後要し、単層詰めで複数サイロを利用する場合はこれらの作業時間が倍増するため、多層詰め導入は毎日の飼料調製作業の省力化がメリットである。
2)単層詰めで推奨される調製条件を遵守した場合、発酵品質は良好であった(表2)。追詰め後のシート被覆前に食塩を表面散布することは、かび発生の抑制に有効である(データ略)。小規模サイロで詰込み11、33日後に開封・24時間外気に曝した後(図1)に追詰めをしても、外気に曝された下層表面の品質は中心部と変わらず、追詰めは10日程度の間隔でも可能である。
3)多層詰め混合物の飼料成分値は、サイロをサイレージカッターなどで垂直に削り出せる条件では、各層の厚さ、乾物率および飼料成分から概ね予測できる(図2)。牧草ととうもろこしの多層詰めでは、予測値と実測値の差は、NDF でやや大きかった(図2)。
4)C農場は牛舎周辺の草地を年2回から3回刈りに変更し、多層詰めを導入して収量の少ない3番草もサイロに詰めた。多層詰めでは、詰込みから利用までの期間が長期になるため、サイロを1基増設した。
4.留意点
1)導入に際して、必要サイロ数、収穫スケジュール等の生産計画を事前に立てる。
2)中・上層の圧縮係数は測定できない場合があるので、1㎥当たりの踏圧時間を目安とする。
3)下・中層のサイレージの乾物密度の測定は、追詰め作業で上層を詰込む前に実施する。
4)食塩を500g/m 2以上散布したサイレージは、乾乳牛の食塩要求量を超える場合がある。
5)層毎の栄養価が大きく異なると予想される場合は、断面が垂直になるようなサイレージの削り出しと十分な混合を行い、サイレージ混合物またはTMR を定期的に分析する。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研酪農試験場 天北支場 地域技術グループ 遠藤哲代
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