令和4年に注意を要する病害虫
道総研 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ・病害虫グループ
道総研 十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 上川農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 道南農業試験場 研究部 作物病虫グループ
道総研 北見農業試験場 研究部 生産技術グループ
道総研 花・野菜技術センター 研究部 生産技術グループ
1.成果の概要
北海道病害虫の防除所、道総研各農業試験場および道農政部技術普及課等で実施した病害虫発生予察事業ならびに試験研究で得られた結果から、令和4年に特に注意すべき病害虫について報告する。
2.令和3年の病害虫の発生状況
令和3年は6月が高温少雨に経過したため秋まき小麦で赤さび病が多発した。ムギキモグリバエは春季の高温により発生が早まり、6~7月の高温により春まき小麦で発生がやや多かった。塊茎肥大時期が少雨傾向であったため、ばれいしょのそうか病の発生がやや多くなった。またネギアザミウマは、6~7月の高温少雨により多発し、ねぎで被害が認められた。 主要病害虫のうち、令和3年に多発となったものを表1に示した。
3.令和4年に特に注意を要する病害虫
(1)秋まき小麦の萎縮病
本病の発生地域は徐々に拡大する傾向にある。本病の症状は縞萎縮病と似た点が多く判別が難しいが、6月中旬まで黄化症状が認められるのが本病の特徴である。縞萎縮病と同様に連作や短期輪作を避けることと適期播種が重要である。発生地域あるいは発生ほ場を拡大させないために、早期発見に努め、他の土壌病害と同様に作業機に付着した発生ほ場の土壌を他のほ場に移動させないことが重要である。
(2)秋まき小麦の赤さび病
赤さび病は高温多照の気象条件で多発しやすく、このような気象条件となった令和3年はオホーツクの一部地域、空知及び上川地方で多発した。近年、赤さび病に対する抵抗性が“やや強”である主力品種の「きたほなみ」において発生が目立っており、抵抗性“弱”品種に準じた防除が必要な状況になっている。上位葉に発病が認められてからの防除では十分な効果が得られないため、発病が懸念されるほ場では、止葉抽出から穂ばらみ期及び開花始(赤かび病との同時防除が可能)の合計2回の薬剤散布が必要である。
(3)春まき小麦のムギキモグリバエ
令和3年は上川地方の春まきと秋まき小麦が混在する地域を主体に、ムギキモグリバエによる春まき小麦の被害が多発した。生育初期に加害されると異常分げつを生じ、無効茎や遅れ穂が増加するため減収や品質低下をもたらす。これらは本種の被害として認識されにくいため注意が必要である。早期播種に努め、5月下旬から6葉期頃まで2~3回程度の薬剤の茎葉散布を実施する。春季が高温になると発生が早まることから1回目の薬剤防除が遅れないよう努める。
(4)野菜類の土壌病害
令和2から3年にかけて、これまで北海道で発生していなかった野菜の土壌病害が次々と発生した。
令和2年に発生が確認されたホモプシス根腐病は、令和3年には発生地域が拡大していることが明らかとなり、道内での拡大が懸念されている。また、令和3年にはスイカ炭腐病の発生がはじめて確認された。本病は収穫直前に株が急激に枯れ上がる病害で、根の表皮が黒く変色して見える症状が特徴である。ウリ科、マメ科、キク科、ヒルガオ科など多くの作物に感染するので、発生に伴って他作物へ転換する場合には非宿主作物を選択する。
令和3年は北海道で最近栽培されるようになった作物でも土壌病害が確認された。しょうがは空知地方を中心に栽培導入がすすんでいるが、根茎腐敗病の発生が確認された。対策として発生株やその周辺株をすみやかに抜き取り、ほ場外で適切に処分する。登録のある土壌表面散布剤や灌注剤による防除を行う。種根茎の温湯消毒(51.5℃・10分)などである。
また、道内で栽培が増えてきているかんしょ(サツマイモ)では、全国的に問題となっている基腐病の発生が確認された。対策として発生株及びその周辺株を抜き取り、ほ場外で適切に処分する。ほ場内での拡大を防ぐため、登録のある薬剤の茎葉散布を行うなどである。
根茎腐敗病、基腐病のいずれとも汚染種苗や土壌の移動により侵入したと考えられ、最も大切な対策は「持ち込まないこと」である。健全種苗を用いること、連作を避け、発生ほ場でしょうがやかんしょを再び栽培する場合は土壌消毒を行うことが望ましい。
4.令和3年に新たに発生を認めた病害虫
令和3年に道内で新たに発生を認めた病害虫は20(病害14、害虫6)であった。その一部を抜粋して紹介する。
(1)はくさいのマキバカスミカメ(新寄主)
収穫期のはくさいの葉身に1~2mm 程度の不定形の穴が点在する症状を生じる。また中肋には褐色の隆起または陥没する症状が発生する。
なお、道内ではとうもろこし、小豆、かぼちゃ、メロン、レタスやねぎなど各種作物への寄生が確認されている。
(2)にんにくのさび病( 新発生)
葉に橙色のやや盛り上がった小斑点を生じる症状を示し、この小斑点はやがて表皮が破れ黄橙色の胞子が認められる。病原菌はPucciniaallii( パクシニア・アリ)である。
【補足】「特に注意を要する病害虫」および「新発生病害虫」の詳細な情報については、北海道病害虫防除所のホームページに掲載しているで、そちらもご覧いただきたい。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研十勝農業試験場 生産技術グループ
電話(0155)62-2431
E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp