質・量・強さ!3拍子そろった牧草チモシー「北見35号」
道総研北見農業試験場 研究部 作物育種グループ
ホクレン農業協同組合連合会 酪農畜産事業本部 畜産生産部
1.試験のねらい
チモシーは、基幹牧草として北海道で最も広く利用されている。しかし、他の牧草と比較して、耐倒伏性や競合力に劣る傾向があり、これらの改良が求められてきた。また、近年では栄養価の高い輸入穀物の価格が高騰し、さらに高水分でのサイレージ調製を行う事例が増加することで発酵不良による栄養価の低下が顕在化しており、栄養価の改良も求められている。そこで、主要熟期帯である中生の晩に属し、収量性、耐倒伏性、混播適性、栄養価に優れる品種を育成する。
2.試験の方法
(1)過去の選抜試験で収量性、耐倒伏性、混播適性、栄養価等で選抜された53母系を材料として、2009年より8,100個体からなる基礎集団の個体選抜試験を実施した。同基礎集団からの選抜80栄養系による評価試験を2011年より実施した結果、8母系14栄養系を選抜した。「北見35号」はそれらを構成親とする母系選抜法で育成され、2013年から2016年にかけて生産力検定試験を実施し、2017年から2019年にかけて地域適応性検定試験および各種の特性検定試験を実施した。
3.成果の概要(標準品種「キリタップ」との比較)
長所:1.採草利用時と放牧利用時の収量性に優れる。
2.耐倒伏性と斑点病抵抗性に優れ、混播適性と越冬性にやや優れる。
3.低消化性繊維(Ob)含量が低く、可溶性炭水化物(WSC)含量が高く、栄養価に優れる。
4.採種性に優れる。
短所:なし。
(1)出穂始は、1日早く、早晩性は中生の晩に属する(表1)。
(2)3か年の合計乾物収量は、全場所平均で「キリタップ」比107%と多い(表2)。また、年次別乾物収量は、全場所平均で同比105-108%と、いずれの年次においても多い(表1)。番草別乾物収量は、1番草では同程度で、2番草では多い(表1)。したがって、収量性は優れる。
(3)越冬性は、やや優れる(表1)
(4)斑点病抵抗性は、優れる(表1)。すじ葉枯れ病抵抗性は、同程度である(表1)。
(5)耐倒伏性は、優れる(表1)。
(6)混播適性は、やや優れる(表1)。
(7)多回刈り適性は、優れる(表1)。
(8)採種性は、優れる(表1)。
(9)飼料成分は、1、2番草ともに、Ob 含量が低く(図1)、WSC 含量が高く(図2)、栄養価に優れる。可消化養分総量収量が多い(表2)。
(10)草丈は、1番草では同程度で、2番草ではやや高い(表1)。個体植条件下における1番草の穂の太さはやや太く、稈長はやや高く、2番草の草丈は高い(表1)。
4.留意点
(1)年間2回の採草利用を主体とし、放牧にも利用できる。
詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研北見農業試験場 研究部 作物育種グループ 足利 和紀
電話(0157)47-2633 FAX(0157)47-2774
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