道路崩壊、ログへ徒歩30分 清水旭山の別荘群
「先見えぬ」住民で復旧作業
【清水】大雨による久山川の氾濫で長山誠教さん(63)が行方不明になった町旭山地区は、自然に囲まれ、道外のキャンパーも訪れる人気の別荘地帯だった。心地よいせせらぎを響かせていた複数の小川は濁流と化し、ログハウスと外部をつなぐ町道は崩壊状態。8日に現地を訪れると、辛うじて無事だった建物で、不自由な生活の中、懸命に助け合う住民たちの姿があった。(高津祐也)
別荘群へと続く町道は土砂と流木が散乱し、川底のように変わり果てていた。地面は深いところで2メートルほどえぐられ、当時の濁流のすさまじさが感じ取れる。
「グォーという重低音と岩石がぶつかり合う音が響いていた」。この地に住む北田秀雄さん(65)は恐怖の体験を振り返る。「停電が起きて真っ暗。明るくなってから外に出ると、別世界だった」。
自宅沿いの道は車が走行できず、買い物などに町に出るには、30分以上険しい道のりを歩かなければならない。京都府出身で豊かな自然環境に魅力を感じ、移住したのは12年前。「リスや鳥などの動物もたくさんいて穏やかな環境だったよ。1週間前までは」。
町によると、一帯には久山川を挟んだ山沿いに約20棟ほどのペンションやログハウスが点在する。建物の所有者の多くは週末や夏場の避暑地など別荘としての利用だが、長山さんら数世帯が定住していた。
キャンプ場「遊び小屋コニファー」のオーナー加藤聖さん(63)が「開拓」を始めたのは18年前。自衛官だった加藤さんは仕事終わりに自ら林を切り開いた。「当時住んでいたのは他に1世帯だけ。10年ほど前から定年後の高齢者が別荘を建てるようになった」。道内では数少ない通年営業のキャンプ場として人気を集め、道内外のリピーターや、遠くは台湾など海外からも訪れるという。
8日午後には住民4人が橘厚子さん(69)の自宅に集まり、互いの状況や今後について話し合った。「避難所に行くにも生活用品を持っていけない」「道路が修復されず、雪が降れば本当に孤立してしまう」「暖房の燃料すら配達されなくなるだろう」。住民たちの不安は大きい。
「何とか道路だけでも…」。水害直後から、住民たちは自らがれきや流木の除去などを進めており、今後は重機などを使って道路の復旧作業を進めていく考えだ。
「先が見えないのが一番不安になる。だが、立ち止まってはいられない」。加藤さんは自らを鼓舞するように力強く話した。