91歳のカメラマン 尽きぬ探究 フォトクラブ昴の嶋谷さん
帯広市内の写真サークル「フォトクラブ昴」(深町知博会長)に所属する嶋谷暁子(ぎょうこ)さん(91)=帯広=は、写真歴65年以上の大ベテランカメラマンだ。半世紀以上にわたるその歴史には、大病を患った苦難の時間もある。それを乗り越え、今も「見たことのない花を探したい」と衰えることのない探究心でシャッターを切り続けている。(菊地正人)
1934年北見市生まれ。小学2年の時に第2次世界大戦が勃発。卒業時に函館で終戦を迎えた。以降は高校まで学校を転々とし、高卒後、帯広市役所で働き始める。同市役所で初の女性管理職にもなった。
カメラを構える父の姿に憧れた。「同じように撮ってみたい」と思い、戦後の貧しかった時代が抜けつつある25歳ごろ、念願のニコンのカメラを購入。初めて撮影したのは、家の中庭にたたずむ「友達の彼」。以来、どこへ行くにも持ち歩き、市役所の写真会に加入するほど熱中した。午前1時に目を覚まして星を撮影したり、午前5時まで起きて太陽が昇るのを収めたり、思い出は尽きない。
そうした日々が実り、2023年「第19回秋山庄太郎『花』写真コンテスト」準特選、25年「第63回富士フイルムフォトコンテスト組写真の部」優秀賞などを受賞。16年には写真集「四季の調べ」「花の詩集」を発売。20年間撮りためた花と風景の写真で「自分史」とした。15年には写真展も開いた。
順風満帆に見える写真家人生だが、10年ほど前、脳内出血で入院。「いつも(撮影で)外を走り回っていたのに、寝てばかりで本当につらかった」と目を伏せる。しかし、「良くなったら必ず写真を撮ろう」と決め病と闘った。
退院がかなうと、すぐに手に取ったのはカメラ。庭先を撮影した。当時のことを「うれしかった」と声を詰まらせながら振り返り、笑顔を見せる。
写真の楽しさを「感動したものを撮影すれば、同じ感動を何度でも味わえる」とし、「野花が見せるふとした表情に感動しながら抱かれては癒やされてきた」と話す。
嶋谷さんは「限られた時間の中で、美しく輝く瞬間を撮るだけではなく、自然環境の中でどのような役割を持つのか、ドキュメンタリー的な撮影を心掛けて、前進していきたい」とはっきりとした口調で目標を語る。