タンチョウの幼鳥救出、親鳥の元へ 大樹の牧場
【大樹】大樹町生花で酪農業を営む吉田貴幸さん(41)方で18日、牧場内の堆肥の貯留槽に、国の天然記念物タンチョウの幼鳥が落ちて動けなくなった。見かねた家族で救出し、介抱して親鳥の元へ帰した。吉田さんは「また親子一緒に戻せて良かった」と話している。
約300頭の乳牛を飼育する吉田さんの牧場内では、通年でタンチョウの姿を見掛けるという。今春は、つがい1組に2羽のひなが生まれ、4羽が一緒にいる姿を確認していた。
同日午後3時ごろ、吉田さんが貯留槽を見たところ、ふん尿の中で動けなくなっている幼鳥を発見。近くでは親鳥が心配そうに見守っていた。最近は幼鳥が羽ばたいて飛ぶ練習をしていたことから、「誤って堆肥の中に落ちてしまったのだと思う」と推察する。
町に連絡して職員に来てもらったが、貯留槽の中に入れずに救出できなかった。ただ、吉田さんは諦めきれず、先端に針金で輪を作った3メートルほどの棒を幼鳥の脚に引っかけ、午後6時半すぎにようやく引き上げた。
「冷えてぶるぶると震えていた」という全長約1・4メートルの幼鳥を、子どもたち3人を含む一家5人で介抱。汚れをぬるま湯で落とし、ドライヤーで乾かすなどして温めた。夜は知り合いの獣医師に頼んで一晩預かってもらった。翌日にはすっかり元気になり、親鳥と対面させると、そのまま一緒に連れ立って行動。現在も敷地内で仲良く過ごしている。
吉田さんは「かわいそうで何とか助けてあげたかった。自分も父親なので親鳥が子どもを心配する気持ちが伝わった。命が助かったことがうれしい」としみじみと話していた。(松村智裕)