子牛の防寒ジャケット活躍 豊頃の内藤さん製作
【豊頃】子牛もおしゃれなジャケットでぬくぬく-。町豊頃の内藤みどりさん(84)が、古着をリサイクルして手作りしている子牛の防寒衣が、酪農・畜産の現場で活躍している。牛の防寒衣は市販もされているが、手作りは珍しく酪農家から重宝がられている。
生後間もない牛は冬の間、体温が低下して病気にもなりやすいため、子牛用防寒衣(カーフジャケット)を着せる農家は多い。
市販品は1枚数千円することもあり、6年前に近隣の親戚農家から「手作りできないか」と、裁縫が得意な内藤さんに依頼が舞い込んだ。
早速、市販の材料で作ってみたが、材料費が予想以上に高くなった。そこで、老人会などを通じて地域に古着の提供を頼んだところ、たくさんの人の協力が得られた。
材料は着られなくなった子供服やスーツ、綿入りの上着などさまざま。縫い目をほどくなどして解体し、縫い合わせてジャケットの生地に仕立てる。温かいようにと裏地にタオルケットやバスタオルなどの素材を使い、機能性も抜群だ。
衣類の分解から始めるため手間は掛かるが、年間200枚以上を作り、近隣や親戚の農家に配る。古着を使うため1枚1枚デザインが違い、「牛に着せるのが楽しい」という酪農家も。
内藤さんも以前は農家だったが、33歳のとき夫の昭さんが35歳で急逝。当時25頭ほど乳牛を飼っており、寝たきりだった義母ちよのさん(故人)の願いもあって、しばらくは子育てや介護をしながら酪農を続けた。
その後は飼料栽培のみ継続し、一昨年まで自らトラクターに乗って牧草を収穫していた。内藤さんは「ここまで来られたのは、ばあちゃん(義母)と夫が見守ってくれたから」と笑う。「べこ(牛)のちゃんちゃんこは、食べさせてくれた牛たちへの恩返し。作るのが楽しい」と製作に力を入れている。
内藤さんの親戚で、子牛に防寒衣を着せている士幌町の酪農家山岸利明さん(60)は「着せる前よりも牛の増体(体重の増え方)がずっと良くなった。経営にもプラス」と喜んでいる。(眞尾敦)