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GAP導入で経営改善~モチベーションに着目した対応策~

道総研 中央農業試験場 農業システム部 農業システムグループ

1.背景と目的
 本道におけるGAP(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)認証の増加には、新規認証事例や更新事例において、新たに生じる作業や費用等の負担に応じた対応策を確立することが重要である。
 GAP認証の現状と課題及びGAP認証によるモチベーションの変化からみた効果を明らかにするとともに、GAP認証に伴う負担への対応策と確立方法を提示する。

2.試験の方法
1)GAP認証の現状と課題
 GAP認証の現状と課題について、公表資料及び関係機関への聞き取り調査により明らかにする。
 (1)調査対象 農林水産省、北海道農政部等の公表資料、関係機関への聞き取り調査
 (2)調査項目 GAP認証件数、認証件数の増加に向けて指摘されている課題等
2)GAP認証によるモチベーションの変化からみた効果
 GAP認証によるモチベーションの変化からみた効果を明らかにする。
 (1)調査対象経営 個別認証経営(米:3戸、たまねぎ:3戸)、団体認証経営(同左)、計12戸
 (2)調査項目 経営主に対するモチベーショングラフを用いたモチベーションの変化
(GAPの「認証を思い立った日」から「現在」に至るモチベーションの変化)
 農場経営管理、食品安全、労働安全、環境保全並びに人権保護に関する項目について、GAP認証前後の達成度合いに係る点数評価)
3)GAP認証に伴う負担への対応策と確立方法
 上記2.2)におけるモチベーションの変化を踏まえて類型化した経営を念頭に、GAP認証による画期に着目して負担を確認し、対応策(新規認証、更新)と確立方法を提示する。
 (1)GAP認証による負担(作業、費用)と対応策

3.成果の概要
1)令和6年における本道のJGAP認証件数は285件(全国5,054件)、ASIAGAP認証件数は38件(全国1,931件)であった。本道では、青果物、穀物並びに畜産に係る認証が確認された(データ略)。
2)認証増加に向けて、GAPの認知度の向上、新規認証・更新に向けた作業・費用負担の低減、経済的なインセンティブの向上等の課題が指摘されており、これらへの対応策の確立が望まれている。
3)GAP認証による経営主のモチベーションの変化は、高位維持型、向上型、低位維持型、低下型並びに増減型(波状型)が確認され、モチベーショングラフを用いてこれらが把握できた(図1)。
4)GAP認証による効果は、モチベーションが高位維持・向上している類型Ⅰでは、多くの評価項目で、平均値を上回る効果が認められており、特に、GAP認証の目的でもある「生産実績PDCAの実行」、「販売先の信頼向上」並びに「在庫管理」等が高く評価されている(表1)。一方で、モチベーションが低位維持・低下している類型Ⅱでは、こうした経済的な効果を認めておらず、評価が低下した。
5)GAPの新規認証に当たっては、GAPに関する知識の習得や各種必要施設・備品の購入、審査対応が必要となり、これらに係る費用負担が生じる(表2)。そのため、各種費用負担の低減対策や農業関係機関の支援が重要である。特に、団体認証による認証負担の低減は、GAP導入時の負担を低減させる。
6)GAP認証の更新に当たっての負担への対応策の確立方法について、「Ⅱ-②低下型」経営を事例に実施手順を整理した(図2)。モチベーションが低下している現在には、審査や事務作業への対応が必要となり、事務の定型化や団体認証における事務局機能の強化といった対応策が必要となる。以上のとおり、モチベーショングラフを活用し、経営主の負担を確認した上で、対応策を確立することが重要である。

4.留意点
 本成果は、米及びたまねぎを生産する個別認証または団体認証を受けた農業者への調査結果に基づく。


詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研中央農業試験場 農業システムグループ
電話(0123)89-2286
Email: central-agri@hro.or.jp

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