寒い地域で採草利用もできるトールフェスク「スワイ」
道総研 酪農試験場 飼料生産技術グループ
1.試験のねらい
土壌凍結地帯におけるトールフェスク(TF)品種「スワイ」の耐寒性特性を評価するとともに、採草利用による生産性を明らかにする。
2.試験の方法
1)酪農試(中標津)において、TF「スワイ」、オーチャードグラス(OG)「ハルジマン」、メドウフェスク(MF)「まきばさかえ」、ペレニアルライグラス(PR)「チニタ」を供試し、「北海道における牧草・飼料作物優良品種選定試験実施の手引き(改定21版)」に準じて耐寒性特性を評価した。
2)酪農試(中標津)、ホクレン(訓子府)の2カ所において、TF「スワイ」およびOG「パイカル」の単散播区、TF/OGの混散播区(左記と同一品種)を供試し、採草利用における生産性を評価した。
3.成果の概要
1)病害区と対照区との差は、雪腐大粒菌核病の菌核着生程度はOGよりも大きく、MF、PRよりも同程度から小さく、萌芽茎数・春の欠株率はMF、OGと同程度、PRと同程度から小さく(表略)、1番草乾物収量はMF、OGと同程度、PRよりも小さかった。凍害区と対照区との差は、萌芽茎数はMFと同程度、OG、PRと同程度から小さく、春の欠株率はMF、OGと同程度、PRと同程度から小さく(表略)、1番草乾物収量はMFよりも大きく、OGと同程度からやや大きく、PRよりも顕著に小さかった。以上より、耐病性・耐寒性について総合的に判断した結果、MFを「強」・「強」、OGを「中」・「中」、PRを「弱」・「弱」とした場合のTF「スワイ」の総合判定は「中」・「中」であった(表1)。
2)TFの出穂始はOGと比較して5~10日程度遅かった(表略)。年間合計乾物収量(kg/a)は、中標津ではTFで110.4、TF/OGで109.8、OGで111.3であり、同様に、訓子府ではTFで158.3、TF/OGで136.2、OGで133.2であり、総じて年3回の採草利用におけるTFの年間合計乾物収量はOGと同程度から多い(表2)。また、OGと比較したTFの飼料成分値は、水分含量は同程度からやや少なく、CP含量は1番草を除いて低く、NDF含量は低く、WSC含量は1番草を除き高いことから、採草利用による高品質自給飼料の生産が可能と考えられる(表3)。また、混播区の草丈はTFがOGより10~20㎝程度低く、TFの冠部被度および乾物収量割合は概ね10-30%で推移し、低水準ながらもOGに抑圧されず一定の割合で推移した(表4)。以上より、OG単播に比べTFをOGと混播することで収量水準を下げずに飼料成分を改善できると考えられる。
4.留意点
・生産者がトールフェスクの導入を判断する際に必要となる、耐寒性特性ならびに採草利用における生産性を知る上で参考になる。
・本成績は、トールフェスク「Swaj」(令和3年度北海道農業試験会議 普及推進事項)の成績の補遺である。
・本成果は土壌凍結地帯において実施された試験の結果である。
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道総研 酪農試験場 飼料生産技術グループ 中村直樹
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