畑の健康診断でブロッコリーを根こぶ病から守る!
道総研 中央農業試験場 病虫部 病害虫グループ
1.背景と目的
土壌病害は防除が難しく生産現場ではその対策が常に求められている。近年、土壌病害の新しい管理法として、『健康診断に基づく土壌病害管理(ヘソディム:HeSoDiM)』法が開発された。一方、道内のブロッコリーの栽培面積は近年飛躍的に伸びたが、栽培年数の経過とともに根こぶ病が発生する圃場が顕在化し、北海道に適応した圃場診断・対策技術が求められている。
本課題はブロッコリー根こぶ病防除技術を確立するとともに、圃場評価に応じた適切な防除技術が選択できる圃場診断・対策支援マニュアルを策定し、これを活用した防除対策を確立することを目的とした。
2.試験の方法
1)ブロッコリー根こぶ病の発生・被害実態と発生・多発要因の解析
2)ブロッコリー根こぶ病の防除技術の確立
3)ブロッコリー根こぶ病圃場診断・対策支援マニュアルを活用した防除対策の確立
3.成果の概要
1)調査した394圃場のうち188圃場(47.7%)で根こぶ病が発生していた。萎れや生育不良の被害が生じた60圃場(15.2%)の多くは、発病度が30以上の多発圃場であった。
2)ブロッコリーの連作や同一圃場への年2回の作付け、土壌から病原菌が検出される、排水不良、土壌pH6.5未満、当該圃場の過去の発生やアブラナ科作物の連作、農家所有の他圃場での発生に該当する圃場での平均発病度が高く、これら8項目が多発要因である(図1)。
3) ブロッコリー以外の作物の作付回数に応じて土壌中菌密度は減少する傾向が認められたが、一旦菌密度が高まると、その後3~4作他作物を作付しても病原菌が検出された(データ省略)。
4)明渠設置により排水性を改善させる(土壌水分飽和度が減少)と発病が軽減された(図2)。
5)アミスルブロム水和剤DF のセル苗灌注とアミスルブロム粉剤の全面土壌混和は防除効果が認められた。両処理を併用すると防除効果が向上し、甚発生圃場においても十分な発病軽減効果が認められた(データ省略)。
6)甚発生圃場において、おとり作物である緑肥用大根と野生種えん麦を作付けしたところ、緑肥用大根は裸地に比べ土壌中菌密度や発病を減少させたが、野生種えん麦では効果が認められなかった(表1)。
7)抵抗性品種「K8-123」は「スターラウンド」に比べ発病が少なかった(表1)。
8)甚発生の枠圃場において、薬剤の土壌混和と緑肥用大根の作付けおよび抵抗性品種の利用を組合せると、防除効果が相加的に向上することが認められた(表1)。
9)多発要因の解析結果から診断項目を6つに整理し、圃場評価(発病ポテンシャル)を4レベル設定した。さらに、各圃場の発病状況が発病ポテンシャルレベルより低く抑えられることを防除目標とする対策を発病ポテンシャルレベル毎に設定し、圃場診断・対策支援マニュアルを策定した(図3左)。このマニュアルを活用すると圃場評価に応じた適切な防除技術が選択でき、95% の適合率で圃場評価により想定されたレベルより低い発病に抑えられた(図3右)。特に、多発し被害が出る可能性が高い発病ポテンシャル3では、マニュアルを活用した7圃場のうち6圃場で被害が生じなかった(図3右)。
4.留意点
1)本成果はブロッコリー根こぶ病対策として活用する。
2)緑肥用大根の作付けには害虫発生に留意する。
3)圃場診断・対策支援マニュアルは、農業研究本部農業技術情報広場のHP 上で公開した。
4)本課題は農林水産省委託プロジェクト研究「AI を活用した土壌病害診断技術の開発」により実施した。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研中央農業試験場 病害虫グループ
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