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道東地域における牧草夏播種年の 飼料収穫量向上のための秋まきライ麦栽培法

道総研酪農試験場 草地研究部 飼料環境グループ
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ

1.試験のねらい
 除草剤秋夏体系処理の草地更新で耕起翌年に牧草を播種する場合、または飼料用とうもろこし畑から草地への転換時に春雑草との競合を避ける場合、牧草の播種は夏となる。前年の牧草またはとうもろこし収穫から牧草夏播種までの期間を利用することで、単位面積あたりの飼料収穫量を向上させる技術が求められている。そこで、牧草またはとうもろこし収穫翌年の草地更新(夏播種)までの期間を利用した秋まきライ麦(以下ライ麦)の栽培特性を明らかにし、単位面積あたり飼料収穫量の向上を可能とする飼料作物栽培体系を提示する。

2.試験の方法
(1)ライ麦の収量性および栄養価を検討し、適切な栽培・収穫条件を明らかにする。
(2)ライ麦栽培期間を最大限に確保するため簡易な牧草播種床造成法の適用性を検討する。
(3)牧草またはとうもろこし収穫翌年の牧草夏播種更新前のライ麦栽培による増収効果を示す。

3.成果の概要
(1)ライ麦は収穫時期が同じ場合、10月上中旬播種と比較して9月中下旬播種で乾物収量が多かった(図1)。生育ステージの進行に伴い乾物収量が増加する一方でTDN 含量は低下した。8月下旬または9月上旬播種では、9月中旬播種と比較して乾物収量は減少した。
(2)播種量は8kg/10a、N 施肥は基肥および追肥とも4kg/10a程度とすることが適当と考えられた。早春に鎮圧をすることで収穫したライ麦への土砂の付着量が減少することが確認された。
(3)ライ麦の乾物収量は単純積算気温(Ts)を用い、乾物収量(kg/10a)=1.39×(播種年Ts)+1.50×(播種翌年Ts)-914.7の重回帰式(R2=0.88、播種年Ts: 播種翌日~根雪始、播種翌年Ts : 根雪終~収穫日)で推定でき、地域間差は見られなかった。
(4)牧草の夏播種更新前にライ麦を栽培する場合、播種時期は9月中下旬、収穫時期は乾物収量の増加に伴うTDN 含量の低下や、1番草収穫作業時期を考慮すると、根釧地域で6月上中旬、十勝地域で5月下~6月上旬の出穂期までとすることが望ましい(表1)。
(5)ライ麦栽培後の安定した草地造成のためには、簡易更新をする場合、ロータリハロによる表層撹拌が推奨され、除草剤播種床処理が必要である。
(6)ライ麦栽培で得られる乾物収量は概ね600~800kg/10a、TDN 含量は62~64%、必要な資材費(種子、肥料および除草剤代)は乾物1kg あたり16~22円、TDN 1kg あたり26~35円であった。ライ麦を栽培しない体系と比較すると単位面積あたりの乾物収量は40~67%程度増加する。聞き取り調査では、ライ麦導入の利点として、1番草の代用となる自給粗飼料が確保でき、嗜好性が良いことが挙げられた(表2)。

4.留意点
(1)夏播種による草地更新を行う圃場で牧草播種当年に栄養価の高い飼料を収穫するために活用する。
(2)本成果は、農林水産省プロジェクト研究「栄養収量の高い国産飼料の低コスト生産・利用技術の開発」により得られたものである。


詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。
道総研畜産試験場 基盤研究部 飼料環境グループ 今 啓人
電話(0156)64-0621 FAX(0156)64-6151
E-mail kon-akihito@hro.or.jp

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