迫る72時間 寒さが阻む 殺処分難航
清水の鳥インフル
【清水】養鶏場の採卵鶏から高病原性の鳥インフルエンザが検出された清水町。17日に該当農場の鶏21万羽の殺処分が始まったが、気温が氷点下となる厳しい環環に加え、道内の養鶏場では初の発生とあって慣れない作業に処分は難航している。目安とされる24時間以内の殺処分は実現できず、対応の遅れも指摘される中、関係者は感染拡大と風評被害を防ぐために懸命の作業を続けている。(高津祐也)
体力を消耗
17日午後、バスから降りて着た防護服の作業員たちは体をガタガタとふるわせながら、対策拠点の町体育館に帰ってきた。自衛隊員の1人は「寒さで体力も消耗するので効率的にやらないといけない」。作業は3班に分かれて2時間交代で行っているが、「鶏舎に暖房はあるが足りていない状況だ」と打ち明ける。
道によると、養鶏場内の夜の気温は氷点下20度以下。自衛隊員の1人は「防護服の中に2枚重ね着している」と話す。防寒着を着込むのに時間が取られるなどして、この日午前10時の殺処分開始予定時間は2時間遅れた。重ね着することで動きにくく、作業のロスにもつながっている。
知事「覚悟を」
国の指針により、本来はウイルス検出から原則24時間以内に鶏を殺処分、72時間以内に埋却しなければいけない。だが、作業開始から2時間後の17日午後2時時点で殺処分数は1000羽。作業の進まない現状に高橋はるみ知事は同3時半からの本部会議で、「明らかに遅れているのではないか。相当の覚悟を持ってやらないといけない。それぞれの立場で強い危機感を持っていただければ」と厳しい表情を浮かべた。
感染拡大を防止するために清水、新得両町の10カ所に設置された消毒ポイントは、当初午前10時に設置予定だったが、資材の調達遅れなどもあり、午後1時にずれ込んだ。町農林課の担当者は「道路が乾きやすいためこまめに消毒液をまかないといけない。各地点にジェットヒーターもあるが、夜間の寒さが心配」と厳しい作業環境を語る。
作業が難航する中、関係者は風評被害が出ないか、警戒感を強めている。町は17日、新聞折り込みで、鳥インフルエンザが鳥から人に感染することがないこをを示したチラシを配布。町内は、自衛隊車両の行き来や、道警のパトロールなど物々しい雰囲気が漂っており、町の担当者は「少しでも住民の不安を取り除いて、風評被害が広がらないよう願う」と話している。
<鳥インフルエンザへの対応>
■16日
午前10時 清水町内の養鶏場で死亡鶏約30羽を確認したと十勝家畜保健衛生所に通報。簡易検査でA型鳥インフルエンザ陽性反応。
午後2時半 道がA型鳥インフルエンザ陽性の確認を報道発表。
同10時半 国が高病原性鳥インフルエンザ疑似患畜と判定。
同11時 道と十勝総合振興局が対策本部を設置。
■17日
午前0時 十勝総合振興局の対策本部が本部会議を開催。
同6時半 陸自第5旅団が災害派遣で清水町に出発。
同8時 清水町体育館で自衛隊が殺処分作業に必要な物品を準備。
同10時 自衛隊員や道職員らが発生養鶏場に殺処分に必要な物品を搬入。
正 午 自衛隊や道職員らが発生養鶏場で殺処分作業を開始。
午後1時 清水と新得の主要道路に10カ所に消毒液ポイントを設置。
午後3時半 道が2回目の対策会議で「午後2時現在で殺処分数は1000羽」と報告。高橋はるみ知事が「強い危機感を」と体制整備と充実を指示。殺処分後の埋却場所について養鶏場内で試掘を行ったが、水が出たため敷地内での埋却を断念。町営牧場など数カ所を候補に、埋却場所を変更する方針を示す。
午後10時半 ウイルス検出から24時間経過。殺処分数は午後7時半時点で3万2310羽と発表。
■18日
午前8時 作業員を150人増員し、850人体制で殺処分を開始。