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小麦の雪腐病を上手に防ぐには-効き目の長い殺菌剤を利用して-

十勝農試 研究部 生産環境グループ
北見農試 研究部 生産環境グループ

1.背景と目的
雪腐病は多発すると被害が大きく廃耕となる危険性もあることから、薬剤による種子消毒と茎葉散布は小麦の安定生産のために不可欠な技術となっている。本病は積雪下で蔓延するため根雪始直前が茎葉散布の防除適期であるが、いつ根雪になるかを予想することは極めて難しい。このため、平年より大幅に早く根雪となった場合には防除することができず、根雪が遅く散布から根雪までの期間が長くなった場合には防除効果の低下が懸念される。防除効果の低下が懸念される場合に再散布の要否を判断する目安がない。
このような問題点を解決するために本課題では、十勝地方で主に問題となる雪腐黒色小粒菌核病および雪腐大粒菌核病を対象に、防除効果が低下する要因を明らかにするとともに殺菌剤の残効性を評価し、防除時期の考え方を示した。

2.試験方法
1)収量および生育に及ぼす影響から見た求められる防除効果の設定 
・試験項目等:被害解析、発病が生育のばらつきに及ぼす影響
2)雪腐黒色小粒菌核病および雪腐大粒菌核病に対する各殺菌剤の残効性の評価 
・試験項目等:防除効果低下要因の解明、各殺菌剤の残効性の評価
3)防除効果安定化対策の検討 
・試験項目等:散布濃度の検討

3.成果の概要
1)雪腐黒色小粒菌核病および雪腐大粒菌核病では発病程度が中発生(発病度26~50)を超えると茎の半数以上が枯死した個体(指数3~4)が10%以上発生し(図1)、起生期以降の生育にばらつきが生じる要因となる。そこで、防除目標を少発生以下(発病度25以下)に設定するのが妥当である。
2)防除効果の低下は、殺菌剤散布から根雪始までの経過日数よりその間の降水量の影響が大きい(表1)。したがって、殺菌剤の残効性の評価は散布から根雪始までの降水量を尺度とすることが適当と考えられた。
3)薬剤散布から根雪始までの期間の降水量を基に雪腐黒色小粒菌核病に対する各殺菌剤の残効性を評価した。発病度が25を上回る事例が認められた降水量は、フルアジナム水和剤Fでは積算降水量120mm程度、日最大降水量65mm程度、テブコナゾール水和剤Fでは積算降水量100mm程度、日最大降水量40mm程度、イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fでは積算降水量40mm程度、日最大降水量15mm程度であった(図2)。
4)雪腐大粒菌核病に対する各殺菌剤の残効性を評価した結果、フルアジナム水和剤Fはいずれの試験でも発病度が25を上回る事例がなく、雪腐黒色小粒菌核病と同程度の残効性が期待できる。一方、チオファネートメチル水和剤は積算降水量80mm程度、日最大降水量40mm程度で発病度25を上回る事例が認められた。
5)登録範囲内で殺菌剤の濃度を濃く散布した場合、防除効果が高まった事例があったが、防除効果が向上しなかった事例も認められ、必ずしも安定的ではなかった。
6)以上の結果より各薬剤の残効性の評価と散布時期の考え方を表2にまとめた。

4.成果の活用面と留意点
1)雪腐黒色小粒菌核病および雪腐大粒菌核病が優占して発生する地域において、薬剤防除を行う際の殺菌剤の選択、散布時期の検討および、再散布の目安として活用する。
2)本試験は、雪腐病抵抗性“やや強”の品種を用いて行い、殺菌剤の散布は地上散布(100L/10a)によった。
3)輪作、適期播種や融雪材散布など、雪腐病に対する基本的な耕種的対策を遵守する。
4)紅色雪腐病防除のための種子消毒を行う。





詳しい内容については、次にお問い合わせ下さい。

道総研十勝農業試験場 生産環境グループ
電話(0155)62-2431 E-mail:tokachi-agri@hro.or.jp

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