すす紋病による飼料用とうもろこしの減収程度とその推定法
道総研根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ
1. 試験のねらい
飼料用とうもろこしにおけるすす紋病について、発病が作物のTDN収量におよぼす影響を明らかにするとともに、発病状況に応じた減収量の推定法を示す。
2. 試験の方法
根釧農試場内のとうもろこし連作圃場にて、すす紋病が発生しやすいよう播種床は原則として表層撹拌法で造成し、施肥は標準量よりやや少ない量で全量基肥、全面全層施用とした。供試品種は、「クウィス」(すす紋病抵抗性は低い)および「39B29」(すす紋病抵抗性は「クウィス」より高い)とした。試験区は品種ごとの3反復乱塊法で設置し、1区幅8畦、畦長5m、約25㎡/区とした。
すす紋病発生程度処理は、プロピコナゾール乳剤(以下「薬剤」とする)の散布と病原接種にて実施した。薬剤散布は、背負い式の電動噴霧器によった。
「病斑面積率」は、群落単位または個体ごとに目視で調査し、1個体につき病斑が1つみられた場合は3%、病斑が複数みられた場合は程度により5ないし7%とし、以降10%刻みで記録した。
AUDPCは「(前回調査時の病斑面積率+今回調査時の病斑面積率)×(前回と今回の調査間隔日数)÷2」を調査ごとに計算し、それらの総和で算出した。TDN収量は、茎葉乾物収量×茎葉TDN含有率(分析値)+雌穂乾物収量×雌穂TDN含有率(文献値)で算出した。
3. 成果の概要
(1) すす紋病抵抗性が比較的低い品種を用い、薬剤散布時期および回数の処理、および病原接種処理を行うことで、すす紋病の発病状況に処理間差を設けることができた(図1(a)、(b)、(c))。
(2) 発病状況の処理間差は「評点」より「病斑面積率」で明瞭に区別できた(図1(a、a-2))。よって、発病状況を定量的に表す指標は、「評点」より「病斑面積率」が望ましい。発病が収量に与える影響の解析にあたっては、収量調査時の発病程度ではなく、生育途中の発病状況を反映させた指標(AUDPC)を用いることが適当と考えられた(データ省略)。
(3) TDN収量は、本試験でのAUDPC1ポイントあたり0.0198ポイント減少すると推定された(図2)。
(4) 本試験でのAUDPCを、発生程度別に4区分した(図2、表1)。発生程度ごとのTDN収量減少率は、(a)「少」では約4%、(b)「中」では約8%、(c)「多」では約12%、(d)「甚」では約22%であった。目標TDN収量を855kg/10aとした場合、上記4パターンでの減収量(kg/10a)を推定したところ、それぞれ(a)34kg、(b)68kg、(c)103kg、(d)188kgと試算された(表1)。
(5) すす紋病の発病状況を収穫の5週前から収穫時まで1週ごとに調査することにより、調査地点の減収程度を推定することができる(表1)。
4. 留意点
飼料用とうもろこしの生産者または指導機関等が、すす紋病発病によって発生する減収量を推定するための参考とする。
詳しい内容については下記にお問い合わせください
道総研根釧農業試験場 研究部 飼料環境グループ 林 拓
電話 0153-72-2004 FAX 0153-73-5329
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