担い手育成牧場から初の新規就農 新得のアユミルクから2人
【新得】JA新得町(太田眞弘組合長)の子会社で、担い手育成を目的とした研修牧場「シントクアユミルク」(町上佐幌東1、高岡雄牧場長)から今年、2人のスタッフが酪農家として歩みだす。従業員の新規就農は設立から5年目で初めて。
新規就農が決まったのは、木嶋進さん(35)と古川康宏さん(46)。木嶋さんは10月、古川さんは12月に、いずれも町内の離農跡地で独立する。
木嶋さんは新得町出身。清水高校卒業後、料理の専門学校を経て札幌で調理師として働いたが、「人混みは合わない」と帰郷。偶然、町畜産振興公社の求人を見たのが農業に進むきっかけになった。同公社と町内の肉牛農家で計8年勤務し、16年のアユミルク立ち上げと同時に入社した。
一方、実家が上士幌町で酪農を営む古川さんは、「自分には酪農しかない」と、家業を継ぐため帯広農業高校を卒業。道内の牧場で修業後にいったんは実家に戻ったが、「親とは違う経営がしたい」と10年前に独立を決意。中札内村の牧場勤務を経て、16年に入社。
搾乳は初めてだった木嶋さんは「何から何まで勉強になった。特に立ち上げの苦労を学べた」と振り返る。さまざまな形態の酪農を経験していた古川さんも、搾乳ロボットをはじめとするアユミルクの先端設備に触れるのは初めてで、「経験の一ページを増やすことができた」と話す。
木嶋さんは「初めての経営で不安しかない」というが、「夢に向かって投資することは必要。子どもの代で稼いでくれれば」と、2男2女の誰かが継いでくれることを期待して一歩を踏み出す。
古川さんは「年齢的に最後のチャンス。牛にも人にも負担を掛けず、生涯現役を目指す」と話す。いずれ、共にアユミルクで働く義理の娘を迎え入れることを視野に入れている。
同JAによると、町内の酪農家はここ15年ほどは年1戸程度のペースで離農が続き、現在は33戸。アユミルク担当の北村一哉経営課長は「ゼロからの新規就農は難しく、居抜きでの継承が基本。就農希望の従業員は他にもいるので、離農のタイミングと合うよう支援していきたい」と話す。
北村課長はアユミルク設立当時の牧場長。2人について「牧場を立ち上げるという、ある意味では新規就農の苦労をすでに知っているので、その経験が生きるはず」とエールを送る。(丹羽恭太)