スナック研究の大学教授が講演 新得
【新得】町内で今月、20年ぶりにスナックが新規オープンしたことを受け、スナック研究者で首都大学東京法学部教授の谷口功一氏が22日に来町。関係者向けの講演会が開かれ、人口減少、高齢化が進む地域社会でスナックが果たす役割を説いた。
1日に開店したスナック「F」(本通北1)は、町内の植村土建が中心街の衰退を食い止めるために、閉店したスナック跡の建物を購入。町の補助も受けて改装し、地銀出身の中原綾奈さん(31)が切り盛りする。谷口氏は、地元建設会社と地銀、行政が連携した取り組みに関心を持ち、来町した。
同社で行われた講演会で谷口氏は「スナックからの地方創生」をテーマに話した。
谷口氏ら大学教授でつくる「スナック研究会」の研究によると、2015年には全国で10万軒を超えていたスナックが現在は7万軒程度まで減少している。スナックは前回の東京五輪(1964年)に向けた風紀取り締まり強化に対応して誕生し、経済成長に伴って増えてきたが、近年は人口減や経営者の高齢化で減少が著しいという。
全国1741市区町村ごとの軒数を調べたところ、総件数が多いのは西日本の大都市が上位を占める。一方、人口当たりの軒数ではへき地でも多い自治体があり、原発や自衛隊駐屯地などの立地と関係があるという。新得町は総件数では1077位だが、人口当たり軒数では187位と上位につける。
スナックには「夜の公共圏」としての社会的役割があると強調した。地域の経済人などが集まるため「情報のハブ」機能があり、自宅でも職場でもない「第三の居場所=サードプレイス」としての機能もある。東日本大震災の各被災地でスナックがいち早く再開したことも、地域コミュニティーにとって必要とされる場であることの表れだという。
高齢化や地域コミュニティーの衰退が進む中、高齢者の憩いの場としての機能が期待されるといい、横須賀市で営業する「介護スナック」の例などを紹介。また、近年はコミュニティー志向の若者の「起業」の場としても注目されているとした。
「『おもてなし』『カラオケ』『ボトルキープ』という日本にしかないものが組み合わさった、文明論的にも世界に誇れるスナックを、来年の五輪に向けて改めて見直してもらいたい」と語った。(丹羽恭太)