露地野菜の収穫作業を省力化するコンベヤキャリア式収穫体系
道総研 農業研究本部 企画調整部 地域技術グループ
花・野菜技術センター 研究部 花き野菜グループ
1.背景と目的
露地野菜は収穫に関わる労働時間や負担が大きいため、収穫作業の省力化や軽労化が求められている。一部の品目では専用の収穫機が実用化されているが、一斉収穫が前提で高額であることから、大規模経営を除いた戸別農家では導入が困難である。そこで本研究では、露地野菜の収穫を対象に、収穫機より安価なコンベヤキャリアの特徴や仕様を整理して試作機を製作するとともに、実証試験により省力効果や身体に対する負担軽減効果を明らかにした。
2.試験の方法
1)コンベヤキャリアの導入事例調査と試作
先行事例調査によりコンベヤの形状や収納方法などを検討し、多品目で共通で使用可能な仕様を明らかにするとともに試作機を製作する。
(1)先行事例調査:かぼちゃ3件、ブロッコリー3件、キャベツ1件
(2)調査項目:コンベヤ種類、寸法、駆動方式、作業人員など
2)コンベヤキャリアを利用した収穫体系の現地実証試験
試作したコンベヤキャリアによる現地試験を行い、省力化や身体への負担軽減効果を明らかにする。
(1)対象品目:かぼちゃ(2圃場、収納容器:鉄コン)、ブロッコリー(1圃場、収納容器:ミニコン)、はくさい(1圃場、収納容器:段ボール)
(2)調査項目:収量、作業人員、作業時間、負担軽減効果(慣行を3としたときの5段階評価)
3.成果の概要
1)コンベヤキャリアの基本性能はコンベヤ長さと荷台広さで決まり、コンベヤ長さは収穫人員1人あたり1.2~1.5mで、収穫者3~4人に対し収納者1人の配置が適する。トラクタ牽引式は荷台を広くできるため、箱詰め収穫体系でメリットが大きい。トラクタ直装式は小回りが利く分、荷台スペースが小さいため、鉄コンやミニコン収穫体系でメリットが大きい。自走式は圃場条件の悪い環境においても収穫するブロッコリー等で利用されることが多い(表1)。
2)小規模多品目に対応したコンベヤキャリアを試作した。方式は最も安価で製作できるトラクタ直装式とし、コンベヤ長さは4m、ベルト幅300mmで油圧駆動とした。荷台は1人の収納作業スペースと鉄コンテナ1基、ミニコン40基が積載できる。移動時はコンベヤを90度回転して固定し、道路法で制限される車幅250cmに収まる構造とした(表2)。この仕様に適した人員は収穫2~3人、収納1人、オペレータ1人の4~5人である。
3)試作したコンベヤキャリアによる収穫作業時間削減効果は、北海道農業生産技術体系に比べてブロッコリーで30~40%、はくさいで10~20%であった(表3)。はくさいの収納は段ボールのため、収納者は収まりの良い個体を選択することや封函作業が必要で作業が煩雑であった。収納2人作業では荷台の狭さが指摘され、段ボール収納でのトラクタ直装式は最適でないと判断された。かぼちゃの収穫作業時間削減効果は、個人差や収量により異なり10~40%であった。先行事例調査では方式が異なるが、ブロッコリーで30~50%、かぼちゃでは茎葉の枯れあがりがやや進んだ圃場ではあるが、30~60%作業時間が低減していた。
4)身体に対する負担軽減効果に対するアンケート調査の結果、ブロッコリーの収穫・収納、はくさいの箱詰め・運搬、かぼちゃの収穫と収納・運搬で負担軽減効果が大きかった(表4)。
4.留意点
露地野菜の収穫省力化技術として活用できる。コンベヤキャリアの仕様や特徴は特注あるいは自作する際の参考とする。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研農業研究本部 地域技術グループ
電話(0123)89-2589
Email: central-agri@hro.or.jp
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