加工用にんじんを4月まで安定供給!
道総研 花・野菜技術センター 研究部 花き野菜グループ
十勝農業試験場 研究部 生産技術グループ
東京農業大学 生産産業学部 食香粧化学科
1.背景と目的
北海道のにんじんは9-10月に収穫・出荷が集中するため、平準化による需給量の調整が望まれている。また、国内需要の6割を加工業務用途が占めるため、加工適性に優れた生鮮品の周年安定供給が急務である。そこで、加工用途に適したにんじん品種「カーソン」および「紅ぞろい」の播種・収穫時期ならびに貯蔵方法を組み合わせることで実需が求める加工歩留まりの高い2L規格以上を主体とする規格内収量の向上(6t/10a以上)と供給期間の延長をはかり、道産にんじんの収穫・出荷ピークを平準化させ、加工実需への安定供給体制を確立した。
2.試験の方法
1)長期安定供給を目指した加工用にんじん栽培体系の確立
供試品種:「カーソン」、「紅ぞろい」。播種時期:5月上旬、5月下旬、6月中旬。収穫時期:秋(生育日数120~180日)、越冬後(融雪直後~1か月後)。栽植様式:畝間66cm、2条まき、条間12cm、株間7.5cm(40,400株/10a)。貯蔵条件:未洗浄にんじんをポリ袋で湿度を保持し2℃で冷蔵。
2)秋収穫物ならびに越冬後収穫物における貯蔵中の外観品質および内部成分変化の解明
試験項目等:外観品質、水分、糖度、硬さ、色調。冷蔵貯蔵条件は上記1)と同様。
3)加工用にんじんの実需者評価
にんじん利用メーカーに加工適性評価を依頼。A社:「煮物(茹で)」、「にんじん入りポタージュスープ」を作り官能評価。B社:カット加工(「千切り」など)での使用可否を判断(越冬後収穫物のみ)。
3.成果の概要
1)規格内収量および2L規格以上収量は、いずれの播種期も生育日数の延長で増加し、「カーソン」は140日以降、「紅ぞろい」は140~160日以降で6t/10a以上の規格内収量が得られた(図1)。「カーソン」、「紅ぞろい」は肥大が進んでも裂根が増加しなかった(データ略)。収穫後、2℃で冷蔵貯蔵したにんじんの2月時点の腐敗根率は、生育日数が短いとバラついたが、生育日数が150日を超える収穫物では安定して少なく「カーソン」が10%以下、「紅ぞろい」が20%以下となった(図2)。越冬後収穫は、土壌凍結地帯では凍害により困難であるが、多雪地帯では凍害に起因する腐敗根率が低いため可能であった(データ略)。
2)秋収穫・冷蔵貯蔵にんじんは翌6月まで貯蔵しても実用上問題となる外観、水分、糖度および硬さの低下はみられなかった(表1)。融雪直後収穫のにんじんは概ね冷蔵4週間までは収穫時の外観、水分、糖度および硬さを維持したが、融雪後在圃期間の長いにんじんは糖度が減少する傾向がみられた。
3)加工適性は生育期間が短いほど評価が高く、生育日数160日程度以上になると茹で・スープともに評価が低かった(表2)。秋収穫冷蔵物は、収穫翌年の4月までは問題なく使用できたが、5月まで冷蔵貯蔵すると食味が低下した年次があった。融雪直後収穫物はカット加工(データ略)を含め使用可能で、2022年産のみであるが融雪7日後収穫物でも実用上問題のないレベルであった。融雪直後に収穫し4週間冷蔵した場合は、食味の悪化がみられ、加工に不適であった。融雪4週後の収穫物もカビ等の発生により加工適性は不適であった。
4)加工用にんじん栽培では、生育日数は長いほど多収となり貯蔵性も向上するが、加工適性を考慮すると150日前後が適する。貯蔵コストおよび収穫作業性から、収穫は低温かつ根雪前の10月中下旬が望ましい。その時期に生育日数150日前後を確保するには5月下旬に播種する必要がある。
4.留意点
1)本成果は、加工用にんじんを長期安定出荷する際に活用する。
2)加工用にんじんの出荷期間が平準化され、実需は道産品を計画的に仕入れて安定利用することが可能となる。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研花・野菜技術センター 花き野菜グループ
電話(0125)28-2800
E-mail:hanayasai-agri@hro.or.jp
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