貯蔵後も「男爵薯」に近い味わいで芽が出にくい ばれいしょ「ゆめいころ」
道総研 北見農業試験場 研究部 馬鈴しょ牧草グループ
ホクレン農総研 食品検査分析センター 食品流通研究課
1.背景と目的
北海道畑作の基幹作物であるばれいしょの安定生産には、ジャガイモシストセンチュウ(以下Gr)抵抗性品種の普及が必須である。道総研では令和3年度にGr抵抗性の早生生食用ばれいしょ品種「ゆめいころ」を育成した。同品種の食味特性および貯蔵適性を解明し、実需者・消費者の品種・商品選択に役立つ情報を示すことで、さらに普及を促進することが期待できる。そこで本試験では、「ゆめいころ」の貯蔵前後の食味、糖含量ならびに塊茎の品質変化等を評価し、既存品種との差異および産地間差を明らかにした。
2.試験の方法
1)「ゆめいころ」の食味特性の解明
理化学分析・食味官能試験により「ゆめいころ」塊茎の低温(3℃)およびControlled Atmosphere(CA)貯蔵注1)後の食味、糖含量、でん粉含量および調理後塊茎の黒変程度を調査し、既存品種(「男爵薯」、「メークイン」、「きたかむい」)との差異および産地(北見農試および道内3箇所)間差異を解明する。
2)「ゆめいころ」の貯蔵適性の解明
「ゆめいころ」の低温(3℃)およびCA貯蔵を実施し、貯蔵中の塊茎の芽長、塊茎硬度および減耗程度の経時的変化、加えて曝光時のポテトグリコアルカロイド(PGA)の増加量を調査し、それぞれ既存品種(「男爵薯」、「メークイン」、「きたかむい」)との差異および産地(北見農試および道内3箇所)間差異を明らかにする。
3)「ゆめいころ」のポテトチップ適性の解明
「ゆめいころ」の貯蔵前塊茎を使って、チップカラーの指標となるアグトロン値、グルコース含量を調査し、「トヨシロ」などのポテトチップに利用されている品種との差異を明らかにする。
注1)冷蔵機能に加えて、貯蔵庫内の環境を「低酸素・高二酸化炭素」に調整し、品質の低下を防ぐ貯蔵。
3.成果の概要
1)「ゆめいころ」の食味特性は、「メークイン」や早生・白肉の「きたかむい」に比べ、「男爵薯」に近かった(図1)。「男爵薯」と比べた場合、貯蔵前後いずれも風味・粉質感が若干異なり、あっさり・しっとりの食味特性で、甘さ・総合評価は「男爵薯」並であった。「ゆめいころ」の貯蔵中の糖含量・でん粉含量の推移は「男爵薯」と同等で、「メークイン」および「きたかむい」より糖含量は低く、でん粉含量は高く推移した(図2)。低温貯蔵よりCA貯蔵の方が、糖含量が高くなり、CA貯蔵6か月後の糖含量は「男爵薯」より高かった(図2)。「ゆめいころ」と「男爵薯」の食味の差異性には、産地による違いは認められなかった(データ省略)。調理後の黒変程度は、「男爵薯」並であったが、産地により「男爵薯」よりやや多くなった(表1)。
2)「ゆめいころ」の貯蔵中の芽長は、産地を問わず「男爵薯」に比べて短く推移した(表1)。「メークイン」および「きたかむい」に比べても芽長が短く推移することは、貯蔵における優点である。一方、「ゆめいころ」の塊茎硬度は貯蔵前後で「男爵薯」より軟らかく、貯蔵6か月以降では「男爵薯」より減耗が多かった(表1)。長期に貯蔵する場合には、既存生食用品種の長期貯蔵と同様に、湿度管理に留意する必要がある。PGA含量は、一般的な馬鈴しょ品種の範疇であった(表2)。
3)「ゆめいころ」の貯蔵前のポテトチップカラーは「男爵薯」並であり、「トヨシロ」などのポテトチップに利用されている既存品種には劣る(表2)。
4.留意点
本成果は、実需における「ゆめいころ」の特性に合致した加工利用や小売場面における消費者向けの情報提供に活用できるほか、生産現場での品種選定や流通場面での「ゆめいころ」の品質保持に役立つ。
詳しい内容については、次にお問い合わせください。
道総研北見農業試験場 馬鈴しょ牧草グループ
電話(0157)47-2146
Email:kitami-agri@hro.or.jp
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