「核のごみ」調査可能性なし 6町村は「道条例違反」 管内市町村長アンケート
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた「文献調査」への応募の動きが後志管内寿都町などであることを受け、十勝毎日新聞社は十勝管内19市町村長に応募の可能性などを聞くアンケートを行った。全市町村長が調査応募と最終処分場受け入れの可能性は「ない」と回答した。寿都町の応募には5町が「反対」とし、6町村は応募は「道条例に違反」とした。処分場建設の必要性については、説明も含めて国の責任を問う意見が多数出た。(デジタル編集部=小林祐己)
◆全市町村が応募「ない」
文献調査については現在、寿都町と同管内神恵内村で応募の動きがある。アンケートは15~18日に用紙配布、記者による聞き取りで行い、管内全市町村長から回答を得た。
文献調査への応募は全市町村が「将来も含めて」否定した。理由は「安全性の確立されていない核のごみの受け入れは、町の基幹産業である農林業や観光業を中心とした安心・安全のまちづくりと相容れず、風評被害を含め多大な影響がある」(上士幌)など、多くの首長が安全性への疑問や農業や観光など地域への影響を挙げた。
応募方式について「国策なので国が責任を持って選定すべき。地域から手を挙げさせるやり方は適切でない」(広尾)という意見の他、応募で国から最大20億円の交付金が支給されることに関して「財政のために核関連施設の誘致や調査を行うことは想定していない」(大樹)という意見もあった。帯広は「地層処分事業に関心がないため」と回答した。
自治体内に最終処分場を受け入れる考えも全市町村が否定し、「地域住民の将来に影響を及ぼす」(広尾)「将来への不安を払しょくできない」(池田)などの理由が挙がった。
◆道条例の趣旨にそぐわず
寿都町が調査応募を検討していることへの賛否では、「賛成」はゼロで、上士幌、清水、広尾、浦幌、本別の5町は「反対」とした。その他は「意見を述べる立場にない」などの理由で、「回答しない」「分からない」だった。
「特定放射性廃棄物は受け入れがたい」などと明記した道条例に文献調査応募が違反するかを聞いた質問では、新得、幕別の2町が「違反しない」、上士幌、士幌、更別、豊頃、本別、足寄の6町村が「違反する」と回答した。その他は「回答しない」「分からない」だった。
幕別は「応募のみをもって違反とは言いがたい」としつつ、「調査が最終処分地選定の一連の工程の第一歩と見なせば、道条例の趣旨にそぐわない」とした。
◆国民的議論を
「核のごみ」の最終処分場の必要性については、7町村が「必要」と答え、「原子力発電所を設置した以上、必要。国民的議論で決定する」」「必要と考えるが、あくまで安全性が確実に担保されることが前提」などの意見が出た。
「不必要」は1町で「原発を導入した国の責任で解決すること」と答えた。「分からない」とした意見では、「超長期に渡る安定した地層が求められる中、地殻変動が活発な日本で安定性が確保されるのか」と疑問の声も挙がった。
自由意見では国の責任を指摘する意見が多く、「国において国民の理解を求める丁寧な説明が必要」「単体の市町村でなく、周辺市町村、道、国で考えていくべき」「原発を作るときに処分場まで決定しなければならない」「何万年もの責任をだれが取るのか」などの意見が寄せられた。
■アンケートの質問と主な回答
「原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査への応募に関する十勝管内市町村長アンケート」
(1)原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施する、処分場選定のための文献調査に将来も含めて応募する可能性がありますか。
●ない
「地層処分事業に関心がないため」(帯広)
「安全性の確立されていない核のごみの受け入れは、本町の基幹産業である農林業や観光業を中心とした安心・安全のまちづくりと相容れず、風評被害を含め多大な影響があるため」(上士幌)
「農業の町である本町にとってはあり得ない」(士幌)
「北海道の条例があり、また、最終処分場としての安全性に懸念があるため」(清水)
「住民の理解を得られそうにないため」(芽室)
「食料生産基地、唯一の観光地!最初からその考えはない」(音更)
「次の②の理由により、最終処分場の受入れは考えられないため、最終処分場の建設を前提とする文献調査についても応募する考えはない」(幕別)
「基幹産業を農業とし、『日本で最も美しい村』の一つとしてまちづくりを勧める本村のブランドをいささかなりとも傷つける選択は考えられないから」(中札内)
「必要とは考えていない」(更別)
「財政のために、核関連施設の誘致や調査を行うことは全く想定していない。地域経済については、現在の産業を振興し、町の継続や発展に努めたい」(大樹)
「核のごみの廃棄場所に関しては、国策なので国が責任を持って処分地を選定すべきだと思う。地域から手を挙げさせるやり方は適切ではないと考える」(広尾)
「基幹産業である農業を中心として、観光、移住・定住などに影響がありすぎる」(池田)
(2)自治体内に最終処分場を受け入れる考えはありますか。
●ない
「一貫してその考えはない!」(音更)
「10万年以上にわたって確実に安全であるという保証がないことに加え、町のイメージダウンや風評被害など、まちづくりの上で様々な障害が想定される」(幕別)
「地域住民の将来に影響を及ぼすものを受け入れる考えはない」(広尾)
「将来への不安を払しょくできない」(池田)
「人間の力で管理できないものは、存在させてはならない」(本別)
(3)寿都町が文献調査への応募を検討していることに賛成ですか。
●回答しない
「自治体独自の判断であり、賛否はない」(池田)
(4)文献調査応募は「特定放射性廃棄物は受け入れがたい」とする道条例に違反すると考えますか。
●違反する
「制度的に違反か否かについていろいろ議論はあるが、条例の主旨からして違反と考える」(士幌)
●違反しない
「文献調査応募のみをもって道条例に違反するとは言い難い。ただし、文献調査が最終処分地を選定するまでの一連の工程の第一歩であるとみなせば、道条例の趣旨にそぐわないものと考える」(幕別)
(5)国内に放射性廃棄物の最終処分場は必要と考えますか。
●必要
「国の定めた現行ルールに則って、選定していけば良いと考える」(新得)
「国家的な課題であり、国民的議論をしっかりする必要がある。国内で廃棄物が出る以上、国内で廃棄物が出る以上、国内での処分場設置は必要と考える」(更別)
「国が責任を持って選定すべきだと思う」(広尾)
「原子力発電所を設置した以上、必要。国民的議論で決定する」(池田)
「必要と考えるが、あくまで安全性が確実に担保されることが前提である」(足寄)
「国内で発生した放射性廃棄物は国内で処理しなければならないと考えるが、火山、地震の多い国で安全に処分できる場所があるのか?」
●不必要
「原発を導入した国の責任で解決すること!これ以上、核のごみを出さないことが一番。処分場は世界どの国にも存在しない」(本別)
●分からない
「万年単位に及ぶ超長期に渡る安定した地層が求められる中にあって、地殻変動が特に活発な国の一つである日本で安定性が確保されるのか」(士幌)
「処分を要する放射性廃棄物があるのであれば、国内外のどこかには処分場は必要と考えます」(中札内)
●回答しない
「放射性廃棄物の処分方法は国が責任を持って決定すべき事項であるため」(帯広)
●その他
「国内・国外問わず、原発を稼働する以上、高レベル放射性廃棄物は生まれてくるものであり、最終処分場は必要である」(幕別)
(6)文献調査への応募や処分場建設に関する意見などがあれば記入ください。(自由記述)
「必要か否かの以前に、エネルギー、原発、核のごみについて国民的な議論をし方向を示す必要がある」(士幌)
「最終処分場の必要性は国全体の課題であるので、もっと国において国民の理解を求める丁寧な説明が必要であると考えます」(清水)
「単体の市町村ではなく、周辺の市町村・道・国で考えていくべきである。一方で自治体の財政難をどうするかという根源的な問題がある。都道府県を巻き込んだ議論が必要」(更別)
「原子力発電所を作るときに、発生する廃棄物量、その処分場まで決定しなければならない」(池田)
「原発がある限り核ごみは必ず排出される。国が責任を持って対応すべき」(豊頃)
「寿都町も神恵内村も財政ありき?悲しい現実です。なぜ?結果、目先の文献調査~なぜなのか、不思議です。何十万年もの責任をだれが取るのですか?二度と人が住まない町・村になります」(本別)
◆関連記事
・「もっと議論を」 管内建設反対7割も、半数は処分場「必要」 核のごみ住民アンケート【電子版ジャーナル】-十勝毎日新聞電子版(2020/09/27)
・海岸から20キロ地域「最適地」 核のごみ処分場 経産省マップ-十勝毎日新聞電子版(2020/09/27)