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超薄膜気球世界最高の53・7キロ到達 JAXA

世界記録更新に笑みがこぼれる吉田室長

 【大樹】宇宙航空研究開発機構(JAXA)は20日、町多目的航空公園内の大樹航空宇宙実験場で同日放球(打ち上げ)した超薄膜高高度気球の到達高度が53・7キロとなり、JAXAが持つ無人気球の世界記録(53・0キロ)を更新したと発表した。前身の文部科学省宇宙科学研究所時代の2002年以来、11年ぶりの快挙。厚さ2・8マイクロメートル(1000分の2・8ミリ)のポリエチレンフィルムで製作した、世界で最も薄い気球の運用技術が確立したことを実証した。

 直径60メートルの小型気球で、3キロの機器を搭載し、同日午前5時25分ごろ、放球した。同8時5分ごろ世界最高高度に到達。11分間、水平浮遊させた後、指令電波でフィルムを破り、同実験場東南東約150キロの太平洋上に着水させた。

 今回でJAXAの今年度気球実験は終了した。当初の予定(大小8基)より少ない小型4基で終えた。(関根弘貴)



 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が超薄膜高高度気球の世界記録を更新したことを受け、打ち上げ現場となった地元大樹町は喜びに沸いている。「宇宙のまち・大樹」として航空宇宙関連の取り組みを続けて約30年、関係者は初めて世界一となった感動をかみしめている。

 同町は1985年に「航空宇宙産業基地構想」を掲げ、95年に航空宇宙産業の誘致を目指して町多目的航空公園を開設。98年に延長1キロの滑走路を舗装化し、2003年に同公園のシンボルとなる高さ35メートルの格納庫が建てられた。08年にはJAXAと連携協力協定を締結し、最先端技術開発が盛んに行われている。

 同構想に取り組み始めたとき、町の開発振興課長として中心的な役割を担った伏見悦夫町長は「こんなにうれしいことはない」と世界記録に声を弾ませた。

 89年から民間の立場で航空宇宙への取り組みを支え続けている「スペース研究会」の福岡孝道会長も「この日を待ち望んでいた。世界記録が生まれた実験場が大樹にあることは世界に誇れる」と感激していた。



 「宇宙のまち・大樹」で、11年ぶりに無人気球の高度世界記録を更新した宇宙航空研究開発機構(JAXA)。実験責任者であるJAXA宇宙科学研究所の吉田哲也大気球実験室長(50)に感想と今後の展望を聞いた。

 -世界記録を達成した心境は。

 とにかく、ほっとしている。世界で最も薄い気球を、より高い場所に向かって確実にコントロールできたことが意義深い。来年度以降につながる実績を残せた。

 -世界記録更新に大樹町の存在は大きかったか。

 役場、漁協、地域住民など地元の方々の献身的な協力がなければ、できなかったこと。大型気球を風雨から守る格納庫にも何度も助けられた。大樹の皆さんにいい報告ができることになり、とてもうれしい。

 -超薄膜気球の今後は。

 中間圏(高度50~100キロ)での大気観測などができるようになる。従来はロケットでしかできなかった。さらに気象条件に左右されにくくて、より高く、より安全に、より多く飛ばせる「使いやすい気球」の開発も進めるつもりだ。

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