大樹で「たこ」の特性を計測 金星探査に活用へ 東大生産技術研
【大樹】東大生産技術研究所の秋田大輔助教らのチームが、町多目的航空公園で「たこ」の基本特性を計測する実験を行った。将来の金星探査への活用に向け、自動車と係留気球を使ってたこの挙動や金星探査実現のために必要な性能を確認した。
一般に金星は地球と同じ経緯で生まれたとされる。一方で現在の状態(大気の密度、気温など)が地球と大きく異なるため、「金星を探査すれば地球環境が整った背景に迫れる」と期待されている。
金星探査には気球を使おうとする研究者が多いが、気球には(1)重い観測機器を載せづらい(2)ヘリウムガスが抜けてしぼんでしまう-など年単位での探査に適さない側面がある。そこで、秋田助教らは気球に代わるものとして、たこに着目。金星には強風が吹いていることから、気球よりも長時間飛行できるたこシステムの開発に昨年度から取り組んでいる。
今回は2~10の9日間、自動車でのけん引試験と係留気球からの落下試験を行った。けん引試験は金星で強風にあおられる様子を模擬し、落下試験は金星に入る際のパラシュートからの切り離しを想定。たこは大(横323センチ)、中(同241センチ)、小(同160センチ)の3種類の市販物を使った。協力した宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスタッフも合わせて5人で行った。
自動車でのけん引試験では、滑走路(1000メートル)を走行するトラックでたこを引っ張り、速度ごとに掛かる負荷で「たこ糸にどのような力が掛かるのか」などを調べた。係留気球からの落下試験では、高度100メートルから落としたたこが「どのように動くのか」などを確認した。
現在、取得した詳細なデータを解析している。秋田助教は「予定していたデータが取れた。必要な設備に安全かつ広い土地もある大樹町は研究者にとって貴重な存在。実験に対する地元の方々の理解も深い。ありがたい」と振り返った。(関根弘貴)