日ハム・レイエス選手も着用 帯広発の野球ブランドを立ち上げた中澤さん
安価で質の良い野球用品を選手たちに-。そんな思いを掲げて、帯広市内の中澤拳太郎さん(26)が立ち上げた野球ブランド「S-VOLTA(ボルタ)」の用品が評判を呼んでいる。メインは羊の革を使用したバッティング手袋。野球少年団や独立リーグの選手たちを中心に愛用者が増えており、今年、北海道日本ハムファイターズに加入したレイエス選手(29)も試合で使っている。(山田夏航)
生粋の“野球小僧”だった中澤さん。更別小3年の時に地元の野球少年団「更別ジャガーズ」に入団し、更別中央中、帯広大谷高でも競技を続け、遊撃手として白球を追った。
高校卒業後は帯広市内の乳製品会社で働いていたが、2022年7月、職場の先輩と交わした雑談が転機に。「『子どもに習い事をさせたいけど何がいいのか』と聞く先輩に、野球はどうかと勧めたが、『お金がかかるから』と断られた」。ネットなどで調べると、同じような理由で野球を諦める人が多い現状を知った。
「安く購入できるブランドをつくり、野球の競技人口減少を食い止めたい」
もとより「いずれは大好きな野球に関わる仕事がしたい」と考えていたことから、立ち上げを決断。主とする用品は、特に消耗が早いとされるバッティング手袋に決めた。流通している手袋は合皮が多いことから、より手触りが良く、質の高い手袋にしようと、天然革にこだわった。
会社ではチーズ製造ラインで勤務していた中澤さんにとって、営業から販売に至るまで「全てが未知の経験」だったが、持ち前のガッツでカバー。働きながら安価で革製品を製造できる工場を世界各国から探し、スマートフォンの翻訳機能を駆使して交渉。約10社の工場のうち、パキスタンの工場と契約を交わした。
デザインも一から独学で勉強し、バットが振りやすくなるよう関節の位置にメッシュ生地を施すなど、格好良さと機能を兼ね備えた用品にしようと試行錯誤を重ねた。ブランド名は勢いのある名前をと、直感でボルタという造語にした。
昨年2月に立ち上げ、フリーマーケットサイト「メルカリ」で販売を開始し、同5月には新たに開設したホームページでの販売に移行。手袋は1組3980円からで、中澤さんは「天然革を使用した他社の製品と比べると半額ほど」と話す。
当初は1カ月で50組ほどの売れ行きだったが、SNSでのPRなどが奏功し、今では200~300組ほどにまで伸びた。価格に加え、品質やデザインに対する評判も良いという。レイエス選手も試合で着用し、千葉ロッテマリーンズとの開幕戦で放った来日初ホームランも、ボルタの手袋を着用しての一発だった。
今年3月に会社を辞め、今は個人事業主として販売しており、オーダーメードグラブの受注も始めた。今後の展望について「事業を広げるべく会社化し、野球をしたくてもお金がなくてできない世界中の人たちに、ボルタの安価な製品でプレーしてもらえるよう頑張りたい」と意気込んでいる。球界への貢献に向けた、中澤さんの挑戦は始まったばかりだ。
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