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詐欺手口変化 知識更新を 「SNS型」被害1億円超

新手の特殊詐欺の手口について解説する佐藤課長

帯広署刑事2課・佐藤課長に聞く
 十勝管内で5月下旬から、SNSを使った詐欺被害が相次いでいる。道内も今年に入り5月末までの特殊詐欺とSNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の被害額は11億円を超え、帯広署管内でも22日現在で1億円超と深刻だ。6月は道警の「SNS型投資・ロマンス詐欺の被害防止に向けた広報啓発強化月間」でもあり、同署刑事2課の佐藤寿哉課長は「詐欺の手口は移り変わりが早い。詐欺の知識をアップデートしてほしい」と注意を呼び掛ける。(菊地正人)

 詐欺をめぐっては昨年秋から、急激にSNS型の投資詐欺やロマンス詐欺が目立つようになった。特殊詐欺を含めた全道の被害額は、昨年は12億9600万円なのに対し、今年は5月末までに11億9600万円に上る。同署管内でも、昨年は2億3530万円だったが、今年は22日現在で1億6625万円と被害がハイペースだ。SNS型詐欺が増えたことで、被害者は高校生以上の全年代にわたっているという。

ネット広告でSNSに誘導
 SNS型投資詐欺は、インターネット上の投資広告が発端となる。著名人をかたるものもあり、SNSに誘導され、指南役を称賛するやりとりを見せられる。お金を振り込むと偽の投資アプリやサイトで利益があるように見せかけることで、被害額が膨らんでいく。出金しようとすると「手数料」や「利益の何割か」などを求められ、だまされていることに気が付くという。

 佐藤課長は、手元の資金に比較的余裕のある人が積極的に関わり、だまされてしまうのが特徴とする。同署管内では今年5月末までで3件、約4000万円の被害が確認されている。被害者は全て70代で、男性2人と女性1人。

「未来のため」献身的に投資
 一方、SNS型ロマンス詐欺はマッチングアプリやSNSなどを使う。2人の未来のために投資するというストーリーを描く場合が多く、借金してでも献身的に投資してしまうという。投資を持ちかけるほか、「会社の金に手を付けてしまった」「スパイをやっていて敵国に捕まった」「戦場で金貨を見つけた。受け取ってほしいから手数料と配送料を送ってくれ」など、さまざまな口実をかたる。

 SNS型ロマンス詐欺は、同署管内で22日までに3件確認され、被害額は8000万円超にもなる。

もうかる話に大体わなある
 こうした詐欺の防止には、ネットバンクの振り込み上限額にも注意が必要という。違法な銀行口座も増えているといい、佐藤課長は「安易に口座を渡すのは絶対にやめて」とする。

 佐藤課長は「もうかる話には大体わながある。手口のトレンドをよく知って、詐欺から身を守って」と強調。啓発活動にも力を入れる考えで、少しでも不安や恐怖を感じた場合は、警察署に直接相談したり、警察相談窓口「#9110」を利用したりすることを呼び掛ける。




手口が巧妙化し、深刻な被害をもたらしている投資詐欺について警鐘を鳴らす佐々木弁護士

多様化・巧妙化 被害回復は困難
釧路弁護士会会長 佐々木涼太氏に聞く

 特殊詐欺被害は、被害者がだまされていることに気付けないままお金を支払い続けることで、被害が甚大になる傾向がある。詐欺被害を未然に防ぎ、被害を最小限に食い止めるには-。釧路弁護士会会長の佐々木涼太弁護士(45)=帯広=に、近年の詐欺被害の現状や、弁護士相談の有用性などについて聞いた。(聞き手・杉原尚勝)


釧路弁護士会 佐々木弁護士「詐欺は巧妙化している」


泣き寝入りせず相談して
 -近年、投資名目の特殊詐欺被害が深刻だ。
 国が自分の老後資金を投資で賄うことも推奨している時代だ。お金を投資に使うハードルが低くなっているところを狙われ、被害件数も被害金額も伸び続けている。だます手口も多様化・巧妙化している。

 「絶対にもうかる」との誘い文句にだまされるケースが目立つ。投資にはリスクがつきもの。リスクについてきちんと説明できる業者以外は「怪しい」と思った方がいい。そもそも「絶対にもうかる」ものは投資とは言わない。

 弁護士に相談が来るのは、既にお金を振り込んでしまった場合が多い。そのタイミングで被害回復をしようにも事実上、ほぼ不可能だ。口座を凍結するには要件もある。被害が伝えられた段階で口座にお金が残っていること自体がまれだ。なかなか被害回復の効果的なお手伝いができないことは課題と認識している。それだけ詐欺の手口が多様化・巧妙化し、社会がそれに追いつけていない。

 -特殊詐欺を含む詐欺全般で弁護士を語った手口も多い。
 一般的に弁護士は、事件の依頼を受けると受任通知で相手方に連絡する。十勝の場合、弁護士の数がそれほど多くないので、調べれば電話口の相手が本当の弁護士かどうか分かる場合もある。だが、都市部などでは弁護士事務所のホームページが偽造される例もあった。相手が弁護士かどうかを確認する作業というのは難しい場合が多い。

 しかも、最近、ロマンス詐欺の被害額を回復すると大々的に広告を出し、着手金を受け取ってほとんど何もしなかった弁護士が社会的に問題視された。同じ業界人としては、じくじたる思いだ。

 -詐欺被害を防ぐために弁護士はどんな役割を果たしていくか。
 弁護士は法律の専門家として、お金を要求されること自体が法的に適切かを判断できる。SNSでも書類でも口頭でも、その請求が架空かどうかのアドバイスができる。

 社会には「だまされた方が悪い」という偏見が根強い。「なぜ、だまされたのか」と周囲から非難されるのを恐れるあまり、泣き寝入りしてしまうケースもある。

 そうした被害者側の率直な気持ちも分かるが、おかしいと思った時点で、ぜひ弁護士を使ってほしい。詐欺被害を未然に防ぐことも、被害を最小限にすることもできる。釧路弁護士会は十勝管内の各地で相談会も行っている。ぜひ相談に訪れてほしい。

<ささき・りょうた>
 1978年鹿追町生まれ。帯広三条高校、北大法学部卒。2002年に司法試験に合格し、帯広市内の斉藤道俊法律事務所を経て、07年に同市西5北3に佐々木法律事務所を開設した。帯広消費者協会会長なども務めた。


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