床下のぞくと謎の光 大正神社で希少な「ヒカリゴケ」偶然発見
帯広市内の大正神社(筒井洋一宮司)境内で、物置に使用している木造小屋の縁の下に、環境省のレッドリスト(絶滅の恐れがある動植物リスト)で準絶滅危惧種に指定されているコケの一種「ヒカリゴケ」が群生しているのを、同市内の玉井孝明さん(75)が発見した。浦幌町立博物館の持田誠学芸員(50)によると、ヒカリゴケは古いトンネルや洞窟に生えることが多く、こうした建造物の縁の下に生えるのは特に珍しいという。(山田夏航)
「何か緑色に光っているな」-。玉井さんがヒカリゴケの存在に気付いたのは2021年5月ごろだった。趣味の野鳥やキノコ観察のため、同神社を訪れた玉井さんは、小屋の縁の下で偶然、幅、奥行き各2メートルほどの範囲に所々生えているヒカリゴケを見つけた。
筒井宮司(55)によると、小屋は少なくとも築50年以上経過しており、老朽化も進んでいることから、取り壊す予定だったという。
ただ、玉井さんから珍しいヒカリゴケの可能性があるとして、専門家への調査を強く頼まれた筒井宮司は「生息環境を崩すわけにもいかない」と取り壊しを中止。10年に新得町内の旧国鉄狩勝線・新内トンネルで見つかったヒカリゴケを同定した経歴のある、持田学芸員に調査を依頼した。
持田学芸員は同神社で採取したコケを持ち帰って調べると、日光に当たると表面を緑色に光らせるレンズ状細胞などの特徴が確認できたことから、15日にヒカリゴケと確認。「十勝管内ではこれまで新得、本別、幕別、足寄で見つかっていて、帯広では初めてではないか」と話す。また、群生した理由については「付近で水が湧いており、地面が湿り日光も当たりづらいことから、生息に適した環境になった」と考えられる。
正式にヒカリゴケだったと持田学芸員から聞いた玉井さんは「本当にうれしい。好奇心を持って観察した結果じゃないかな」と喜びを表した。筒井宮司は「比較的、市民が訪れやすい場所にヒカリゴケがあるのはあまりないと思うので、維持していきたい」と力を込め、「参拝時にはマナーを守って見てくれたらいい」と話している。