釣りを愛するクリエイター~人の気配
今月はデザイナーの石丸海さんを紹介したい。僕のソロデビュー作は本の形をした6曲入りのミニアルバム「夜の終わり」なのだが、その表紙は彼の作品でもある。さらに、次のアルバムに収録されている『Stars And Lies』の絵本も彼と制作した。もちろんどちらも色あせず、今も本棚に並んでいる。大切な作品だ。
今月、彼と約10年ぶりに一緒に仕事をした。現場は会議室でも、作業部屋でもない。山に入り、渓流釣りをするという企画。僕が続けているアウトドア雑誌「ランドネ」の連載の方でのオファーだった。
僕が新たに興味を持ち始めた釣り。その師匠として海さんを召喚した。彼は子どもの頃から釣りをして遊び、最近では朝早く釣りをしてから働くこともあるという。生粋の釣り好きだ。そんな彼に教えてもらいながら、僕は釣りという新たな趣味を持った。その様子は本誌やウェブ版でぜひ確認してもらいたい。
ミュージシャンを含め、周りのクリエーターに釣り好きが多いのは偶然だろうか。僕はそうは思わない。きっと何かしらの理由があるはずだ。彼と釣りをして何か気が付くことがあるだろうか。釣りに出掛ける前、そんなことを思った。結果、その日は釣りのことしか考えていなかった。でも、それが答えなのかもしれない。釣りは無心になれるとよく言うが、その意味を僕ははき違えていたようだ。
「釣りをしながら考え事をすることはない」と彼は言った。「釣りに集中しているから」だと。クリエーティブに過ごすためには、そこから離れることも必要だと僕も思っている。その手段として、釣りは最適なのかもしれない。他のことを考える余地がない。まさに無心になれる時間なのだ。
そして、今日も彼は創作の旅に出掛けている。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。帯広柏葉高卒。Riddim Saunterを解散後、ソロ名義での活動を続ける。V6への楽曲提供が話題になるなか、ニューアルバム『Chase Af-ter』をリリース。12月9日に帯広でのライブが決まっている。