猫の不妊去勢 ワゴン車で出張手術 岐阜のクリニックが芽室で
猫の繁殖による社会問題を解決するため、不妊去勢手術(スペイ)を手がける専門病院「にじのはしスペイクリニック」(岐阜市、高橋葵院長)の移動式手術室「ニコワゴン」が来勝し、芽室町内の農場で18日、十勝管内などの依頼者の保護猫計22匹に施術した。(高井翔太)
札幌市内で保護猫シェルターを運営するNPO法人「ツキネコ北海道」(吉井美穂子代表)が共催。同法人には、十勝管内からも多頭飼育や野良猫の繁殖などの相談が増えていて、移動手術室の来道に合わせて、札幌市に加えて芽室町での実施が決まった。
高橋院長(41)は以前、長野県内の保健所や愛護センターで獣医師として勤務していた。相談の7割は野良猫の苦情で、毎日のように子猫が持ち込まれた。保健所では施術も行っていたが、遠方を理由に来ることができない人もいた。
遠方理由に断念も
こうした問題の解決方法として開業を決断。「来られないのであれば、病院が行けばいい」と考え、手術設備を備えた車両を思い付いた。車両は同院で助手を務める菊地円さん(47)が、ワゴン車をベースに内部を改造して販売も行う。
管内では、感染症の懸念などから保護猫の施術を行う動物病院は限られ、費用も2万円以上かかるなどハードルが高い。同法人の滝澤礼奈さん(42)は「春に生まれた子猫は、秋には産める体になってしまう」と言い、猫は繁殖力が高くて早期の手術が必要だ。
移動手術室の敷地を提供した酪農業の50代女性は、牛の飼料を餌にするネズミ駆除のために猫を譲り受けたが、繁殖してしまった。「懐いてから手術と思っていたら増えてしまい、動物病院に問い合わせたが2、3カ月待ちだった」と話し、今回は7匹の施術を依頼した。
浦幌町から訪れた13匹の猫を保護する60代女性は「(一般的な費用の)5分の1以下の料金でやってもらえて助かる。自前の負担はきつく、市町村の補助があれば」と訴える。上川管内南富良野町から訪れた人もいた。
モデル事例に
高橋院長は、2020年から事業を始めた。毎月施術を行う地域では「野良猫は手術するものという意識に少しずつ変わってきている」と手応えを感じている。
野良猫の繁殖や多頭飼育崩壊は、異臭や鳴き声、害虫発生などから社会問題になる。「最終的には自治体が車両を持ってシェアし、主体的に運営していく必要があると思う。モデルとなる事例をつくって、あとは横に広がっていけばいい」と語った。
今年度は車両を8台まで増やし、産官学連携の取り組みを計画している。