水着の演出、来客数うなぎのぼり 「下品な」イベントに評価の声も~あの時の記憶(188)
【2000年7月27日】
当時の副会長佐藤道博さん「時代変われど今後も続けたい」
水着姿の女性が、水しぶきを上げながら滑るウナギを追い回す-。帯広の短い夏が盛りを迎える7月下旬、市内中心部の繁華街・名門通では「名門夏祭り」が開催され、人気企画の「うなぎのつかみどり」では酔客の歓声やヤジが会場に響き渡る。水着女性×ウナギというインパクトが特徴的で、「帯広の夏の風物詩」として親しまれている同イベント。初企画に至る経緯は「(居酒屋やスナックが多い)名門らしさのある目玉イベントを作りたい」との思いからだった。企画当時に帯広名門通り共栄会の副会長を務めていた佐藤道博さん(75)=同会第13代会長=は振り返る。
▽音更行事に着想
名門夏祭りは、帯広名門通商店街振興組合と帯広名門通り共栄会が共同で主催し、市内商店街の夏祭りの先陣を切る。1990年に始まり、メロンやカラーテレビなど大型商品が当たる抽選会や餅まきが人気を集めていた。「もともとにぎわいのある祭りだったが、さらに盛り上がるユニークなものをやりたい」と、役員会で検討。男性はふんどし、女性は水着姿で参加する十勝川白鳥まつり(音更)の名物行事だった「人間裸カーリング」から着想を得た。
全国的にも珍しいとされる「うなぎのつかみどり」。縦1・2メートル、横4メートルの巨大な水槽には40~50匹のウナギが放たれ、参加者は優勝賞金5万円を目指し、制限時間内に捕まえるウナギの数を競う。1回目の応募受付係を担当した佐藤さんは「出場するだけで1万円もらえるということもあって、50、60代の応募もあり、あの時は驚いた」と懐かしそうに笑った。初回は名門通りで働く女性や主婦、会社員など19人が参加。ウナギと格闘する姿を一目見ようと多くの来場者で人垣ができ、会場は熱気に包まれたという。
▽連続優勝の名人も
予想以上の盛況ぶりから翌年以降も恒例イベントとして定着していった。出場者の中には、連続で優勝した“名人”も。開催当初はウナギの動きが鈍くなる後半の出場者が有利になってしまったため、第3回以降は、毎回ウナギを数10匹ずつ入れ替えて実施。それでも“名人”の技術は高く、生きの良いウナギを次々と捕らえる姿は「見事だった」と思い返す。
今の時代に逆行する奇抜さすら感じられるが、初開催以来途切れずに親しまれている。イベント開始のアナウンスが流れると見物客が走って集まり、水槽の周りにはあっという間に人だかりができる。「こんなに長く続き、まちなかがにぎわう『下品な』イベントはほかにはない」と「評価」する声も多い。
「うなぎのつかみどりが始まってから知名度も上がり、来場者数も抜群に増えた」。祭りの規模拡大や安全性のため、2005年からは南10丁目を通行止めにして開催。警察への許可申請に尽力した佐藤さんは祭りに対する思い入れも強い。仕事終わりのサラリーマンなど酔客が多く集まるからこその盛り上がりを大事にしつつ、事故やトラブルのないよう配慮する。
今年は名門夏祭りがコロナ明け4年ぶりに開催され、久しぶりに迫力あるつかみ取りが見られる。なじみ客からは「ウナギは何時から?」「今年はあるのか」などと、楽しみにする声も寄せられているという。佐藤さんは「時代の変化もあるが、うなぎのつかみどりは、これからも続けていってほしい」と願っている。(児玉未知佳)
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