解体中の住宅から映画黄金期のポスター 新得
【新得】新得町で明治時代に建てられ、解体中の「旧村形邸」(町元町49)から、映画黄金時代のポスターが“発掘”された。昭和30年代の映画で、高校生までこの住宅に住んでいた村形隆之さん(67)=札幌市在住=は「おぼろげに覚えている。娯楽の中心だった映画全盛期の息吹を感じる」と、約60年ぶりにポスターと対面し懐かしんだ。(佐々木健通信員)
見つかったのは2枚で、女優の桑野みゆき(当時16歳)が主演した「野を駆ける少女」(1958年、松竹映画)と、歌手の神戸一郎(当時21歳)が主演した「海から来た男」(59年、東宝映画)のカラーポスター。「野を駆ける少女」は、写真のポスターが、上下2枚でつながり縦長になっていたとみられる。
ポスターは、解体作業をしている建築業者「夢家建造」(豊頃町、加藤義隆代表)の作業員が和室の板壁をはがし、板の下にあったしっくいの土壁に張ってあった。
加藤代表(62)は「(ポスターの)一部は破れてはいるが、色も鮮やかで昭和期をほうふつとさせる映画文化を感じた」と話す。
ポスターの映画が上映されていた時代は、毎日の暮らしに映画が寄り添っていた。当時幼少だった村形さんも映画が好きだった父昭三さん(故人)と母テルさん(92)に連れられて、新得市街地にあった「新得劇場」(65年廃業)へ通った。小林旭の「ギターを持った渡り鳥」などのシリーズものに夢中になったという。
解体作業を見守る村形さんは「(映画は)当時の町民に楽しみを与える大きな役割を果たした」と往時を振り返った。
築119年ほどの「旧村形邸」は民家としては町内最古とされ、04年か05年ころに建てられた。歴史的な建造物としても貴重な建物だったが、老朽化により6月中旬までに取り壊す。