押切さんスケート引退決意 人生の第2ステージへ
【中札内】スピードスケートで五輪に3大会連続出場した中札内村出身の押切美沙紀さん(30)が、この春から新たな道を歩み始めた。12日には中札内文化創造センターで開かれた村の高齢者学級「ポロシリ大学」(久保寧男学級長、学生70人)の定例授業の講師を務め、「3月に現役引退を決めた。今後は地元への恩返しになるような活動をしていきたい」と話した。(斉藤さゆり通信員)
押切さんは講義後インタビューに応じ、引退の決断に至った心境や今後の抱負について語った。
平昌後「苦しく」
押切さんは2014年のソチ五輪で1500メートル22位、団体追い抜き(チームパシュート)4位。平昌五輪は5000メートルで9位。ただ、チームパシュートのメンバーから外れて五輪を終え、けがも抱えていたため心身のバランスを崩して平昌後の2季、競技を離れた。
「パシュートメンバーとして金メダルを取れなかったことで、自分には価値がないのではないかと考えてしまった。自分で自分を追い詰め、うつ状態や摂食障害にも陥った。平昌後の2年間が一番苦しかった」。治療のため米国に渡り、カウンセリングや瞑想(めいそう)、ヨガに通った。「ゆったりと時間を過ごし、自分と向き合い気持ちを整理できた。私はやっぱりスケートがしたいと思った」と振り返る。当時の日本代表ヨハン・デビットコーチや所属先だった富士急の励まし、地元の支えも大きかった。
ヨガなど資格取得
20年の全日本距離別選手権で復帰。昨年の北京五輪では、5000メートルで8位入賞を果たした。その後、現役引退は表明せず、昨シーズンは基本的なトレーニングを続けながら、心理カウンセラーやヨガインストラクターの資格を取得したという。引退については、今年1月の時点で「春までしっかり考えたい」としていた。
その言葉通り3月いっぱい悩んだ末、「今の自分にはやりたいことがある」と引退を決意。「地元の中札内と現役時代に拠点にしていた帯広の皆さんからずっと応援してもらった。だからこそ恩返しをしたい」と話し、「スケート人生の中で自分が経験したことや学んだことを、今後はこれまで支えてくれた地域の人たちのために役立てていきたい」と力を込めた。
ポロシリ大学では参加者33人に、運動前と就寝前のストレッチを指導した。