置き石で「ニペの耳」 高山植物に影響も
【上士幌】大雪山国立公園内の石狩岳(標高1967メートル)から沼の原へ続く稜線上の通称「ニペの耳」(1895メートル)付近で、高山植物の上に石を「ニペの耳」と並べるいたずらが頻発している。自然公園法違反の疑いがある。環境省大雪山国立公園管理事務所は「景観を守るために最低限の山のマナーを守ってほしい」と呼び掛けている。
自然公園法違反の疑い
同事務所によると、最初に確認されたのは8月22日で、発見した登山者から報告を受けた。高山植物のウラシマツツジとガンコウランの上に縦約1メートル、横約5メートルにわたって細長い石が並べられていた。
現場は自然公園法の「特別保護地区」で、置き石は、土地の形状変更や、植物損傷などを禁じる同法に触れる疑いがある。違反すれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる。高山植物は日が当たらずに枯れると回復まで時間がかかり、生物の生育環境にも影響を与える可能性があるという。
9月4日に同事務所が撤去したが、10日にも置き石の「ニペの耳」の写真が、登山情報アプリ「YAMAP」やSNSに投稿されていた。インスタ映えを狙ったと推測され、投稿を見た登山者からは「映えるからと高山植物を犠牲にするのは悲しい」「山に敬意を払っていない」などと怒りの声が挙がる。
一方、標識のないニペの耳の場所を示すための行為との見方も。NPOひがし大雪自然ガイドセンター代表理事の河田充さんは「必要に応じて登山者が立ち寄りやすい通過点に、看板整備や山頂標識の取り付けを考えるきっかけになったのでは」と話す。
同事務所では、模倣を防ぐため、石狩岳の登山口やトイレに注意を促す標識を設置した。
大雪山国立公園では2年前にも、「十勝岳」(2077メートル)の登山道脇に石を並べて「つちのこ」と書いたいたずらがあった。同事務所の齋藤佑介国立公園管理官は「承認欲求に駆られて自然を傷つける行為はやめてもらいたい」と厳しく指摘する。(大健太郎)