人の気配「おもてなしの匂い」
アウトドアという趣味を持ってから15年。山登りから始まり、ここ数年はキャンプをすることも増えた。飽きずに続けていられる理由はいくつかあるが、今日はその中のひとつを紹介しようと思う。
アウトドア雑誌「ランドネ」でコラムの連載を始めてもうすぐ6年になる。音楽以外でここまで継続的にやらせてもらっている仕事は他にない。最初の2年はさまざまな達人を訪ねて外遊びの魅力を教わり、現在進行形のシーズン2では僕が行きたいところに行って、書きたいことを書くスタイルで楽しくやらせてもらっている。それこそが先の理由のひとつであり、そこにはランドネ編集部・安仁屋円香さんの存在がある。
彼女が誰かと山に行く時、そこにはおもてなしの匂いが漂っている。フィールドで何をしたいかを聞いて旅の計画を立て、当日は相手のペースに合わせて歩く。その人を見て、秘湯と呼べる温泉やおしゃれなパン屋に立ち寄り、時には武骨なアウトドアショップの情報を並べたりもする。
仕事柄ということもあるが、逆にそういう性格だからこそ続けられる職業とも言える。僕を自由にやらせてくれているのも、その方が僕のアウトドアへの興味が冷めないことを肌で感じているからだろう。音楽活動や、それに左右される気分の変化も感じながら、さりげなくギアを入れ替えてくれている。
誰かに合わせることは、時に息苦しく、普通は面白くもない。しかし、苦しい時に人を思いやれることこそ優しさであり、それを面白いと思えれば、また人の気配が増していくだろう。彼女を見ていて、ふとそんなことを思った。
新曲『Sunny』では、彼女から教わった旅の魅力を歌っている。
<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。V6への楽曲提供が話題。3月26日、渋谷クアトロでワンマン公演を開催する。