備え 国が財政支援を 被害軽減「伸びしろ」 北大大学院高橋教授インタビュー
千島海溝沿い超巨大地震の道の津波想定策定に関わった北海道大大学院理学研究院付属地震火山研究観測センターの高橋浩晃教授に、内閣府による被害想定公表の意義などを聞いた。(小林祐己)
-被害想定をどう受け止めているか。
具体的にどれくらいの被害が出るのか、国が数値で出したことが大きなポイントだ。これまでは2005年の古い想定に基づいたもので、東日本大震災以降の新しい津波対策が始まってから初の被害想定になる。道全体で大きな被害が出ることが再確認された。
今回の大きなポイントは、対策をすれば被害は減らせると明らかにされたことだ。道内ではこれまでも各自治体や道、開発局などがさまざまな対策をしてきたが、対策にまだ「伸びしろ」があると思っている。例えば、津波の避難施設も増やしてきたが、まだ避難が難しい地域は残っている。想定では冬の死者数が増えているが、より近い場所に避難施設があれば死者数を減らすこともできる。
こうしたハード整備に加え、住民は東日本から10年たって意識も低下しているので、とにかく早く逃げる対策を取る。ハードとソフトを整備することで、より被害が減らせる可能性がある。伸びしろは残っていると私は見ている。
なので想定を深刻に受け止めるよりは、頑張ってみんなで対策をやろうとポジティブに捉える方が良い。
-冬季の被害の大きさが指摘された。
今回の想定の特色の一つは、積雪寒冷地の想定が入っていること。北海道は特に寒いので、逃げるだけではダメで、逃げた先できちんと体温を維持できるようなハード整備も考えなくてはいけない。せっかく高台に逃げたのに寒さで死んでしまうようなことがないような対策を考えなくては。
-千島海溝地震では対策の財源が課題だった。
国がこういう被害が出ると想定したのだから、対策を市町村に投げるのでなく、きちんと国の責任でやるべきだ。対策すれば被害が減る、さらに寒さでそれが帳消しになるとも言っているのだから、国の責任で道や市町村に財政的な補助をしていくことが必要だ。
ただ、何でもハード対策をやれば良いというものでもない。財源は国が用意するのだが、地域に落とし込むのは地域の人の考え方を入れてやるべきだ。どういう津波対策が良いのかをそこに住む人たちで検討して、予算が必要なら国に手当てしてもらうという流れが大事だと思う。