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人の気配「自分の居場所を作りながら」

カウンターに立つ佐々木亜裕美さん(右)

 ライブは大都市のみで開催されるものではない。そこに行く理由があれば僕はどこでも歌ってきたし、きっとこれからもそうするだろう。そして、その理由というのは自分でつくることもあれば、つくってもらうこともある。自分の居場所の話。

 青森県八戸市に「Patrie(パトリ)」という名前の小さなカフェバーがある。音楽好きの佐々木亜裕美さんが2019年にオープンしたお店で、先月も弾き語りをしに行ったばかりだ。このコロナ禍に、東京以外で3年連続ライブをした唯一の場所である。初めて訪れたときから、その場所にはとても気持ちの良い風が吹いていた。そして、それは亜裕美さんが生み出しているものだと気が付くのにそう時間はかからなかった。訪れるたびに、静かな言葉の奥に確かな意志を感じる。

 お店のオーナーは自分で自分の居場所をつくり、そこが出入りする人にとっての居場所にもなったら、今度はオーナーにとっても周りがつくってくれた居場所に変化していくのではないか。それが僕が想像するすてきなお店の姿である。そして、どんな職種であれ、「お互いさま」であることにちゃんと気が付いている人は優しくて強い。そこに人の気配が生まれる。「Patrie」と亜裕美さんから勝手にその風を感じ、勝手に共感をし、年に1回のペースで東京から通っているというわけだ。今や「Patrie」は僕の居場所でもある。

 自分で自分の居場所をつくることは大切だが、時には誰かがつくってくれた居場所で過ごすことも同じように大切である。どれくらいの人がそのことに気がついているだろう。そんな想いから生まれた『One Love』という曲がある。ぜひ聴いてみてほしい。(第2火曜日掲載)




<Keishi Tanaka(タナカ・ケイシ)>
 ミュージシャン。1982年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。V6への楽曲提供が話題。新曲『I’m With You』のリリースツアーを12月に開催!

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