十勝幌尻岳、芽室岳の林道が来年度にも解除へ 2016年の台風で通行止め
2016年夏の大型台風で土砂崩れなどが起き、通行止めになっていた日高山脈の十勝幌尻岳(1846メートル)と芽室岳(1754メートル)への林道が来年にも解除される。来春にも国立公園化が見込まれる中、登山者にとっては「山にアプローチしやすくなる」と朗報だ。一方で、復旧のめどが立っていない林道も多い。(高田晃太郎)
入山者が減少
日高山脈の十勝側を管轄する十勝西部森林管理署(帯広)によると、北海道百名山の十勝幌尻岳(同)は、台風前の15年度は530人が入山届を出したが、この3年は150人前後。同管理所は「登山口が遠くなったことが登山者減少につながった」とみている。以前は車で通行できた林道が台風で壊れ、登山口まで片道約2キロ歩く必要があるためだ。
ただ、この林道は伐採事業を控えているため、11月に復旧工事を進め、6年ぶりに通行止めが解除される見通し。芽室岳(清水)に通じる約4キロの林道も復旧が進み、共同で管理する清水町と同管理所は、来年雪解け後に安全を確認した上で解除する方向。
町は「台風前は相当多くの登山者がおり、町内に宿泊する人もいた。町の大きな観光資源なので、やっとここまできたという思い」(商工観光課)とし、今後、被災した山小屋の復旧も検討するという。
一方、復旧時期が決まっていない林道もある。台風前は小さな子どもも登っていた伏美岳(芽室)に通じる林道は、約7・4キロの区間が通行止め。芽室山の会の上嶌寛幹事長は、伏美岳は縦走ルートの起点でもあることから「2時間の林道歩きのために宿泊数を増やすと、その分、装備が重くなる」と懸念する。
「億単位」後回し
ほかにも、ペテガリ岳(大樹)に続く歴舟川支流林道や、楽古岳(広尾)への札楽古林道も復旧見込みが立っていない。同管理署は「いずれも橋が壊れていて、復旧には億単位が掛かる。伐採などの事業がある林道を優先せざるを得ない」と説明する。
登山者にとって林道歩きは単調な上、遭難リスクを高めることにもつながる。十勝山岳連盟の宇野吉彦遭難対策委員長は「通行止めになった林道は、沢の増水で分断されるなど道が不明瞭で迷いやすくなり、つい先を急ぐあまり、間違った道に入ってしまう恐れがある」と指摘。一方、十勝自然保護協会の共同代表・佐藤与志松さん(86)は「アプローチが長い分、軽登山者が来ないのでオーバーユース(過剰利用)を防いでいる面もある」と話す。