畜大サークル「酪農どうでしょう」 就農の後押しに
帯広畜産大学の学生サークル「酪農どうでしょう」は、管内外の牧場見学をはじめ地域に積極的に出向き、酪農現場の実情について学びを深めている。サークル出身者には新規就農などで酪農家の道を歩んだ人もおり、大学の1サークルながら道内の基幹産業を支える一助を担っている。代表の安賀梓さん(20)=畜産学部畜産科学科3年=は「大学の実習だけでは見えてこない、酪農の実態を学ぶことができている」と話す。(澤村真理子)
「蹄病(ていびょう)は一般消費者の酪農に対するイメージダウンにもつながると考えられます」。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言のさなか、9月下旬にオンラインで開かれた同サークルの部会。畜産科学科1年の尾崎ももさんが「乳牛の蹄病について」をテーマに発表し、パソコンの画面越しに蹄病の種類や予防法、治療について紹介した。
毎月開かれる部会では、担当の学生がそれぞれ関心を持ったテーマについて調べて発表する。この日は15人が参加し、「つなぎ飼いだったら(歩行の様子が分からないので)判断しにくいね」「蹄病が乳量減少につながるのはなぜ」などと意見や質問を述べた。同科3年の松下仁美さんも「人工授精・受精卵移植と乳牛の改良について」をテーマに語った。
同サークルの前身は「山地酪農研究会」。2014年に「酪農どうでしょう」に改め、幅広く酪農について学ぶサークルへと変更した。現在は畜産科学科の女子学生を中心に約70人が所属する。
牧場見学と部会を活動の柱に、OB・OGや地域の酪農家とのセミナーの開催、道内各地の「新規就農を考える会」への参加や、コロナ前には酪農学園大、北大との合同合宿も行っていた。サークル出身者には酪農家の後継者と結婚して就農したり、結婚後に新規就農を果たした人もいる。
愛知県出身で入学前は「牛も見たことがなかった」という安賀さんは「酪農は奧が深い。牛に何を求めるかによって経営スタイルが違う。規模や経営者のポリシーが合わさって、それぞれのスタイルができている」と実感する。サークル活動をきっかけに、現在は道の農業普及員を目指し、酪農家をサポートしたいと考えている。
“酪農家パーソナリティー”として酪農の魅力を発信し、牧場見学などでサークルの学生を受け入れている角倉円佳さん(38)=広尾町=は「学生のうちから熱心に活動していてすごい。酪農界でどんどん人が減る中、こうした活動はうれしい。私も学生たちともっとつながりを持ちたい」と活動を後押しする。