人の気配「この感情のみぞ知る」
三重の「ＦＯＬＫ ＦＯＬＫ」の前に立つ東山さん
誰でも偶然に遭遇することはあるだろう。僕も偶然を感じることはあるので、それ自体をもちろん否定はしない。しかし、その中のなるべく多くを偶然ではなく必然と思えるかどうか。そんなことを僕はひそかに意識している。その日、いつもより早起きしたこと。いつもと違う道を選んだこと。スマホを見ていなかったこと。街角で気になる人を見掛けたのは、偶然によく似た必然なのではないか。
三重県伊勢市に「ＦＯＬＫ ＦＯＬＫ」という結婚式場がある。経営者の東山みちや君と意気投合し、何度もアコースティックライブをさせてもらっている、すてきな場所だ。そこはコーヒー屋でもあり、宿泊できるホステルでもある。人生を面白くしようとする人たちが今日もそこに集まり、会話を楽しんだり、あるいは、一人物思いにふけたりしていることだろう。訪れるたびにアップデートされる結婚式場と、そこで働く人たちが僕は大好きなのだ。
たまたま良い物件が出てきて、たまたま仲間に恵まれ、たまたま新たな出会いもあり、たまたま良い感じ。そんなことあるはずがない。目や耳や鼻を利かせながら街を歩き、相手と話し、少しだけ前に踏み出そうとする人が、漂うものに触れることができて、偶然のような出会いにつながっていくのではないか。そして、それを必然と呼ぶこともまた、次につながる感覚なのではないか。そんなことを考えたときに、ふと伊勢の仲間の顔が頭に思い浮かんだ。仲間こそ偶然ではなく、必然の積み重ねの結果である。
数年前に大きな決断をした。「神のみぞ知る」こともあるけれど、「この感情のみぞ知る」こともあると信じたい。そう思って『Ｔｈｉｓ Ｆｅｅｌｉｎ’ Ｏｎｌｙ Ｋｎｏｗｓ』を歌い続けている。
＜Ｋｅｉｓｈｉ Ｔａｎａｋａ（タナカ・ケイシ）＞
ミュージシャン。１９８２年大樹町生まれ。大樹小、大樹中、帯広柏葉高卒。Ｖ６への楽曲提供が話題。８月２５日に新曲『Ｉ’ｍ Ｗｉｔｈ Ｙｏｕ』をリリース！
