「中止覚悟していた」 管内ランナー悔しさ 道内聖火リレー
道内に発令されている緊急事態宣言の延長に伴い、6月13、14日の道内の東京五輪聖火リレー全行程が中止されることになり、参加予定だった管内のランナーは悔しさをにじませた。五輪本番を盛り上げ、帯広市の観光資源をPRする機会だったが新型コロナウイルスの影響で無念の中止。前年の延期の末の結果だけに落胆しながらも、次の目標に向けて気持ちを切り替える姿もあった。(内形勝也、石川彩乃、大木祐介)
応援幕お蔵入り
帯広市内のばんえい競馬場で開かれる聖火リレーのランナーに決まっていた音更町の歯科医師田中義博さん(64)は、「最終的に中止が決まり、悔しくて無念」と肩を落とした。本番を見据えて、トーチに見立てた軟式野球の金属バットを掲げたランニングなどのトレーニングを重ねる中の中止だった。院長を務める宝来中央歯科(音更)のスタッフらが作ってくれた応援横断幕は、披露の機会がなくなった。
1964年の東京五輪以来、憧れだった聖火ランナーの夢はかなわなかったが、別の形で五輪開催を後押しする。歯科医にも認められたワクチン接種について要請があれば「打ち手」になる考え。「聖火リレーを中止に追い込んだ新型コロナウイルスを成敗したい」と話している。
同じく帯広競馬場でばん馬の引くそりに乗って聖火を運ぶ予定だった団体職員長野富美恵さん(58)=帯広市=は、延期を経験していることもあって、「正直、開催は無理かなと思っていた。すごくショックを受けたわけではない」と語った。
何より選手が
会社員松下長正さん(39)=同=は渡島管内七飯町で、妹の団体職員松下容子さん(38)=同=は胆振管内洞爺湖町で走る予定だった。長正さんは「一部のランナーの『なぜ走れないのか』という憤りも分かるが、今はフラットな目線」と冷静に語る。28日の記者会見で中止意向を示した鈴木直道知事の「ランナーに寄り添った対応をしたい」という言葉に少しの期待しているが、「ユニフォームを着るわけでも、トーチキスやるわけでもない状況で走行証明書をもらっていいものか」と複雑な心境を語った。
容子さんは「結果として走ることができなくても、ランナーに選ばれ自分の活動が認められたことがうれしかった」と素直な気持ちを話す。その上で、「何よりも五輪に出場する選手が一番、当日に良いパフォーマンスができるよう取り組んでいる。(ランナーとしては)中止が決まったのならそれに従うしかない」との考えを示した。
容子さんは元アイスホッケー選手で、冬の五輪を目指し競技に取り組んでいたが膝の難病を発症し、選手復帰が難しくなった。その後、リハビリで始めたマラソンを地道に続けたことで、聖火ランナーとして五輪に関わることが決まった。今後も「走ることは続ける」と語り、フルマラソン完走の目標達成に向け気持ちを新たにした。