創業94年の老舗そば店「かし和家」閉店 浦幌
【浦幌】創業94年の歴史を持つ浦幌町内唯一のそば店「かし和家」が、27日の営業を最後に店を閉じた。店主の山岸嘉一(かいち)さん(69)の体力面や年齢的な理由。当面は閉じたままだが、町内の近江正隆さん(50)=十勝うらほろ樂舎代表理事=が建物を購入し、そば店継承の可能性を含め、新たな活用形態を検討している。
かし和家は、山岸さんの祖父の嘉吉さん(故人)が1927(昭和2)年に帯広市内で創業。40(昭和15)年にJR浦幌駅近くの現在の場所に移転し、父の好美さん(故人)を経て、3代目の山岸さんが妻の真里子さん(64)や従業員2人と切り盛りしてきた。
店のこだわりは「やぶそば」。健康に良いクロレラ粉末を更科そばに混ぜ合わせた緑色の麺が特徴だ。かつては会合などで頻繁に利用され、店の奥にある座敷でも大人数での宴会が盛んだったという。
店を畳み売り先を探す決心をしたのは3年前。年齢や体力面に加え、帯広にいる長男が家業を継ぐことも難しく、後継者不在に陥っていた。転機は昨年10月。食事で来店した近江さんに売却先探しの協力を求めたところ、逆に近江さん側から購入の話を持ち掛けられた。
近江さんも家庭の事情があり、東京で1人暮らしをする母親の転居先として住居付きの同店舗を選んだ。店舗部分の活用法を検討中で、現時点では町内の若者のチャレンジの場とし、かし和家という店名や、古くから愛用されてきた調理器具などを残したままでの利用を考えている。
山岸さんは「意欲のある人たちの手で次の時代を切り開いてほしい」と期待を寄せ、近江さんは「かし和家は浦幌の財産。これを機に、町内で事業承継の動きが出てくれば」と話している。(小縣大輝)